2024年11月05日( 火 )

どうなる?久留米・欠陥マンション裁判(3)~専門家インタビュー

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 福岡県久留米市の分譲マンション「新生マンション花畑西」の構造・施工の欠陥を巡り、設計事務所と施工業者(鹿島建設)に損害賠償を求めた裁判は、まもなく、結審を迎える見込みである。この裁判の原告区分所有者側の技術支援に関わっている建築構造の専門家・仲盛昭二氏に、緊急電話取材を行った。

(聞き手:伊藤 鉄三郎)

 ――仮に、1審で原告勝訴の判決が言い渡され、これを不服とした鹿島建設や設計事務所が控訴をした場合、原告は、賠償金を得られないまま、再度、長期間の控訴審に耐えなければならないということになりますか。

久留米市の責任を訴える原告

 仲盛 あくまでも仮定の話ですが、被告の設計事務所2社は、技術的にも経済的にも、控訴をする資金力も技術力もないと思われるので、こちらについては判決が確定すると思われます。
 判決には、おそらく、「仮に執行できる」との文言が付されると思われますので、判決後、速やかに、鹿島建設が賠償金を支払う姿勢を見せなければ、被告の財産を仮差し押さえすることも可能だと考えます。これは、控訴をする・しないに関係なく、一般的に行われています。
 大企業である鹿島建設にとって、「銀行口座の差し押さえ」は大問題です。とくに当座預金を差し押さえられた場合、形式上、手形の決済が一時的にできなくなり、致命的です。
 金融機関からすれば、「銀行口座差し押さえ=不渡りと同じ倒産に準じた扱い」となります。金融機関から受けている融資などについても、ほとんどの契約書に、「理由の如何を問わず、口座を押さえられた場合、一括弁済・一括返済」との条項がありますので、融資等の返済の期限の利益を失い、一括返済を迫られることになると思います。数十億円の賠償金を惜しむために、世界的な巨大企業である鹿島建設が大恥をかく結果となるのです。

 ――裁判の争点であるマンション設計の瑕疵の責任について、どのようにお考えですか。

 仲盛 まず、構造計算を偽装した設計事務所は確信犯であり、裁判においても技術的な反論を一切していないので責任を免れる道理はありません。
 次に、建築確認審査において、設計の単純な偽装を見抜けなかった行政の久留米市が、構造計算書をチェックすることなくフリーパスで審査を通過させた責任が重いことも間違いありません。
 久留米市に建替え命令の義務付けを求める訴訟の1審判決では、原告(管理組合、区分所有者)の訴えを退けていますが、判決では、構造計算の係数に関して、法令を誤って解釈し、真逆の判断をしていたことが明らかになっています。控訴審では、裁判所の法令解釈の誤りが争点の1つとなると思われます

 ――施工の責任については、どのようにお考えですか。

 仲盛 設計事務所と久留米市による構造計算の偽装に追い討ちを掛けたのは、鹿島建設による施工ミスです。設計の偽装により低い耐震強度となっている建物の施工において、「図面に明記された梁を施工しない」、「建物全体に亘り、法令に定められた鉄筋のかぶり厚さを確保できていない」「コンクリート内部に木片などの異物を混入」などといった、お粗末な手抜き工事を行っています。
 鹿島建設は、これらの手抜き工事について、下請工事業者である地場の栗木工務店に対して、「非常に施工が悪く、危険な状態である」と、補修費用の損害賠償を請求していました(のちに和解)。
 鹿島建設は、下請業者の責任は厳しく追及し、損害賠償を求めたものの、自らが被告となった今回の裁判においては、当初は「図面通りに施工をしたのだから、施工の責任はない」と主張し、のちに、梁を施工していなかったことを追及されると、「図面にある梁を施工しなくても安全である」と、開き直っています。
 「図面通りに施工した」「図面通りに施工しなくても安全だから問題ない」と、平気で一貫性のない主張を繰り返す鹿島建設には、もはや企業倫理は存在しないと思います。
設計事務所、久留米市、鹿島建設の関係を、交通事故に例えるなら、最初に、設計事務所がはねた人を、次に久留米市がはね、さらに鹿島建設がはね、致命傷を負わせたようなものです。まさに、共同不法行為ということになるのではないかと思います。

(つづく)
【聞き手・文:伊藤 鉄三郎】

 
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