【緊急寄稿】建設業界と行政機関、総ぐるみの偽装問題(2)
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協同組合 建築構造調査機構 理事長 仲盛 昭二 氏
鉄筋コンクリート造の建物において、柱・梁接合部の検討を意図的に省略
二つ目は、鉄筋コンクリート造(RC造)の建物の構造計算における不正な設計です。RC造(鉄筋コンクリート造)の柱と梁が交差する接合部は、柱・梁・壁・床などと同様に重要な構造部材であり、必ず安全を確認するよう「鉄筋コンクリート構造計算規準(日本建築学会)」に規定されており、現在の建築確認においては、当然のこととして厳しく審査されています。しかし、2007年の建築関係法規の改正以前は、建築確認において指摘されることがほとんどなかった(当時は行政庁による建築確認が主体)ので、接合部の安全をまったく確認しないまま建築確認済証が交付され、安全性を確認できない違法な建物が数多く建設されました。
接合部の検討を行えば、梁などの部材断面の大幅な増大および、これにともなう鉄筋量の増加などの対応が必要になるため、現在の設計においては、私を含めて構造設計者全員が苦労しており、建築コストの上昇という影響も生じています。このような背景があり、当時は、接合部の検討が意図的に排除されていたものと思われますが、私がランダムに検証をした結果、検討が省略された建物は、官民を問わず、全体の8割程度の割合だと思われます。
過去の不正な設計の建物で接合部の検討をすれば、80%以上の建物において接合部の構造耐力が20%前後不足している結果になると思われます。
補強や改修をするためには、「部材断面を大きくする」などの方法が考えられますが、部材断面を大きくすれば、ますます建物の重量が増え、当然、軸力・地震力なども大きくなり、基礎も含めて、構造計算上、厳しい方向に向かいます。また、既存の建物のコンクリート断面を大きくすることや、新たに鉄筋を追加することは、物理的に不可能に近いと思われるので、補強や改修には、大変な困難がともなうと想定されます。
国、行政庁、構造設計者団体の会長も、質問を黙殺
私は、これらの事実について、福岡県・福岡市などの行政、構造技術者団体JSCA(日本建築構造技術者協会)会長、そして国土交通省に対しても、対策を講じるよう、再三、意見を述べてきました。しかし、これらの行政庁は、理由は不明ですが、知らぬ顔を決め込んでいます。その理由を推測すれば、私が指摘した、建築確認における重大な審査ミスが公になれば行政に非難が集中し、全国のたくさんの建物の安全検証を行わなければならず、大混乱に陥るからだと考えます。しかし、建物の構造耐力が不足している(15~25%前後不足)事実は、現実に存在しているのです。
私が、これらの構造上の問題点を指摘しているのは、決して、私利私欲のためではありません。かつて私が代表を務めていた構造設計会社が構造計算を担当した物件に関して、構造上の問題点が判明し、私自身が責任を追及されることも十分にあり得ると承知しています。自分が投げたブーメランが戻ってきて自分に当たるように、私にとって、これらの問題を社会に訴えることは、自分の保身を考えれば得策ではありません。しかし、不正な設計を全国の設計者が行い、行政も黙認していたことは、国民をだましていたことに他ならないので、これを社会に知らせ、建物を補強させることは、たとえ、自己に不利益なことであっても、技術者として当然の義務・使命であると考えます。
(つづく)
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