N会での必然的なめぐり合い
自画自賛ではない。福岡デベロッパーの栄枯盛衰(1989年~2015年)のレポートを書けるのは、筆者をおいてほかにはいない。それ以降は最前線から離れているから最新の動きは多少、掴めないでいる。その分野に関しては当社の月刊誌『まちづくり』の事業部長・永上が継承している。
話は3月10日(火)のことである。K.ホールディングス(株)代表取締役・倉橋高治氏の卓話を聞いた。日頃から「一度は接触したい」と願っていたのである。
代表取締役 倉橋高治 氏
同日、筆者の長年の友人である平河氏(弘大社長)が主催しているN会で倉橋社長が卓話することになっていた。「是非、お聞きしたい」という思いが高まり参加手続きをした。読者にも「このN会にぜひ参加すること」を勧める。参加者は若い世代が多い。「縁を築いてビジネスにつなげよう!」という人たちが集まっている。また、ベテランの事業家たちが要所に座っているのが魅力で、彼らが適切な助言をしてくれる。このN会の売りは30分間の卓話の企画があることだ。毎月講師が替わるが、年1回は必ず県知事が卓話をされる。お近づきになれる絶好のチャンスである。
満を持しての事業立ち上げが大成功
さて本題に戻ろう。誰もが福岡中心部(とくに春吉地区)で「ここは俺の土地」であると証明する看板──K.ホールディングスの看板を見た記憶があるだろう。従業員10名で年商100億円を達成している会社である。オーナーは倉橋高治氏(77歳)で、設立は2006年9月。今年9月で設立20周年を迎える。
倉橋社長が今の事業を立ち上げた年齢は定かではないが、58歳で独立したのは間違いないだろう。同氏は大分県出身、福岡大学商学部卒業後、東京証券(株)を経て東証一部上場の大東建託に入社。建築営業畑を歩き、最終的には九州の責任者として実績を挙げてきた。九州市場の実情を頭の隅々にたたき込んでいる。この長期の経験と人生を極めた経営哲学は異彩を放っている。以下に講演の中身をまとめてみよう。
①九州は世界で36番目に大きな島である。ここには開発されていない場所が無数にあり、ビジネスの可能性が無限にある。九州の立ち位置は申し分がない。上海に近い、インドにも接近しつつある。観光とビジネスの活発化で人が集まる。そこに不動産ビジネスの市場が拡大するという市場設定をなす。まず重要なのは市場性の捉え直しである。
②次に使命感を高らかに掲げる。「地元九州、福岡の活性化の為に全身全霊を尽くす。資金は東京など中央にあるものを集める」と公言する。実際、当社の物件購入者は東京のファンドが大半である。例として、大手資本へ100億円の物件を売れば、資金が地元へ流れてくる。このような資金還流構造が確立できる。
③損益計算書を添付しているが、いかに効率的な経営に徹しているかが明瞭であろう。社員10名で年商100億円を叩き出すのは驚異的である。
④付記したいのは人事活用策に特色があることだ。退職者(高齢者)にターゲットを絞っている。「誰でも年金生活者は将来の生活に不安を抱く(物質的不安)。まだまだ仕事から離れたくないという人材もいる」と解説する。不動産に精通し、やる気満々の高齢者への機会提供に熱心である(ターゲット:55~65歳)。これは倉橋社長が58歳で独立した体験に根差しているのではないか!
使命感について補足すると「信条」として次のように語られている。「九州の魅力を引き出す不動産開発で九州全体の経済を盛り上げたいと考えています。『九州を世界に』をスローガンに掲げ、九州を『世界の九州』へと押し上げたい」。

軸を変えずにニーズの先取り
「少数精鋭の経営モデル」を貫徹するには不動産一棟売りしかない。まずは生命線として不動産物件をいかにたくさん仕込むかである。常時、10~15件保有できないと事業維持・拡大が困難になる。ビジネスに相応しい物件を確保できたら、馴染みの不動産ファンドと企画の打ち合わせを始めて建築に着手する。実績を積むと自分たちの企画をベースに主導して物件を立ち上げる。その期間に営業活動に入る。これで契約になればビジネス成立。そのスピードは群を抜いている。
一棟売りも時代に応じた変化が不可欠
不動産関連ビジネスには付帯するものが数多くある。一棟売り以降の管理ビジネスから建設業まで、幅広く多種多様である。倉橋社長はビジネスモデルに迷うことがなかった。不動産を仕入れ、一棟売りまで漕ぎつける──このモデルを貫いてきた。
累計取引高は24年までで1,400億円におよんだ。21年(創業15年)までは福岡・佐賀・長崎・鹿児島で投資額10億円以下の物件開発が中心であったが、それ以降、年間取引高100億円超を初めて達成。現在は都心部での50~100億円規模の開発へと転換している。
この変遷は後日、当社発行の『I・B』で発信する。倉橋社長は本当に稀有な経営者である。








