2024年12月26日( 木 )

九州地銀の業界再編を占う(2)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 今年も残りわずかとなったが、九州地銀の業界再編の動きのなかで大きな話題となったのは、やはりふくおかFGと十八銀行の経営統合が無期延期になったことだろう。実質白紙となった要因について時系列を追って振り返って見ることにしたい。

<2017年1月20日>

◆ふくおかFGと十八銀は昨年2月に経営統合の合意を発表していたが、ふくおかFGと十八銀行は公取委の審査長期化にともない統合時期を半年延期し、2017年10月1日にすると発表した。【詳細は(2)参照】その金融統合に「待った」をかけたのが公正取引委員会(以下公取委)だった。

公取委が「待った」をかけた理由とは

◆公取委の審査が長期化したのは、十八銀行と親和銀行の合併によって
(1)長崎県内の貸出金シェアが約7割(政府系金融機関などを除く)に上る「市場の寡占化」。とくに離島などではシェア100%となる。

(2)十八銀行と親和銀行が合併すれば、貸出金利の高止まりや支店の統廃合により、利用者が不利益にならないかなど競争状態を慎重に調べた結果、長崎県内で寡占状態が続く恐れがあると判断。(3)さらに地域地元経済界から「市場が寡占化して貸出金利が上がるのではないか」といった不安の声が上がったことだった。

◆そのためふくおかFGと十八銀は2016年8月に予定していた統合最終合意と、12月の臨時株主総会をそれぞれ延期したのは、公取委の態度が厳しくなっていることを肌で感じたからではなかろうか。
 ふくおかFGとの交渉窓口であった十八銀行の森甲成・取締役代表執行役専務(59)が16年11月28日早朝、長崎市金屋町の自宅マンション敷地内で倒れているのを通報を受けた長崎署員が発見したが自殺だった。経営統合の厳しさが読みとれる。

<2017年3月8日>
◆金融庁監督局の西田直樹審議官は3月8日、ふくおかFGと十八銀行の経営統合に対し
て、地元企業の理解を引き出そうと異例の地元説明会を長崎市で開催。「経営統合を推進しているわけではない」と前置きしつつ、「統合でつくり出される経営資源の余力を、地域経済活性化に資する分野に振り分け、顧客本位のサービスを提供することが重要だ」と、地銀再編の意義や目的などを説明して、経営統合に対する地元の不安解消に努めたという。

◆これを受けて菅義偉内閣官房長官は同日の記者会見で、ふくおかFGと十八銀行が目指している経営統合について、「現在、公正取引委員会で審査が行われている途中であり、コメントは控えたい」としたうえで、「地域の金融機能がさらに円滑に発揮され、地域の活性化につながることを期待したい」と述べたという。
 この発言は、ふくおかFGと十八銀行の経営統合が官(公取委)対官(金融庁)が対決する政治問題となり、中立的な対応となったものと見られる。

◆これが認められるには、思い切って十八銀行の店舗および行員を西日本シティ銀行傘下の長崎銀行に譲渡し、シェアを下げることが求められることになる。そうなれば十八銀行内部から「何のための経営統合か」が問われることになる。

 金融庁が異例の地元説明会を開催したのは、事態の打開に最後の望みを託したというのが真相のようだ。

(つづく)
【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

 
(1)
(3)

関連記事