裁判例に学ぶ労働時間管理(3)~喫煙時間は休憩時間か
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休憩時間の規定だけで十分か?
今回も、前回に引き続き、休憩時間の考え方について見ていくこととします。前回は、たとえば、「弁論の全趣旨によれば、午前12時から午後1時までが休憩時間であると認められる」(2013年10月4日東京地裁判決)と述べるだけで休憩時間を認定している裁判例があるように、休憩時間については、就業規則に規定があり、実際に与えていれば、比較的認められやすいことを説明しました。
ですが、それだけで十分でしょうか?
実態が必要
その点について争いがあれば、休憩時間を否定される場合もあります。
たとえば、ベビーシッター兼家事補助として勤務していた従業員の夜間勤務における休憩時間について、「たしかに……夜のコマが設定されることになった際に作成された原告らと被告との間の労働契約書には、夜のコマの業務内容につき、『乳幼児が就寝中であるため、基本的に乳幼児と同室で就寝、乳幼児に哺乳等行うなど非常時のみの対応になるため拘束時間は9時間であるが実質1時間以上の休憩が可能となるために、8時間勤務として扱う』との記載がある。しかしながら、この労働契約書においても、夜のコマにおいて1時間の休憩時間(すなわち、ベビーシッターが乳幼児から完全に目を離してよい時間)を特定して明確に定めたことは何らうかがわれないのであり、……その労働密度の濃淡はともかく、使用者の指揮命令下から外れて労働からの解放が保障された1時間の休憩時間があったものと認めることはできない」(13年9月11日東京地裁判決)として、1勤務における1時間の休憩を認めませんでした。業務の実態を基に判断されています。
喫煙時間は休憩時間?
それでは、就業規則に規定していない休憩時間、たとえば、業務を離れて喫煙ばかりしている従業員がいる場合、そのことが具体的に立証できれば、その時間は休憩時間と認められるのでしょうか。
ショッピングモールに勤務する従業員について、「被告は……喫煙のために職場を離れることが1日に数回あったと主張する。たしかに、店舗を離れたことがあったことは原告も認めるところであるものの、その場合でも、常に連絡が取れるような態勢になっており、その店舗の入っているショッピングモールを出る場合には、会社への報告が必要であったことが認められる(原告本人)のであって、これらの時間を休憩時間とみることはできない」(15年2月27日岐阜地裁判決)と述べ、喫煙時間を休憩時間とは認めませんでした。他方、休憩時間と認める判決もあります。
喫煙自体があったことは認められたものの、その時間が休憩と評価されるかどうかで異なる結論が出されています。この判例では、店舗からの退出が認められていれば、休憩時間と評価された可能性が高いと思われます。
具体的記録の重要性
このように、所定の休憩時間であれば、実際に休憩を付与し、自由に使えるようにしておけば、そのための立証はそれほど困難ではなく、具体的な証言ができれば十分ではないかと思われます。それに対し、それ以外の時間について休憩時間だと主張するのであれば、少なくとも、日常的に具体的な記録をとっておく必要があるといえます。
(つづく)
<プロフィール>
中野 公義(なかの・きみよし)
なかのきみよし弁護士事務所
1977年4月生まれ。労働基準監督官、厚生労働省本省(労災補償、労使関係担当)勤務の経験から、労働事件に精通している。
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