2024年12月24日( 火 )

波乱模様の経済界(2)~シェア自転車 セブンが本腰、中国大手も日本上陸へ(前)

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 今年のトレンドは、「シェアリングエコノミー(共有経済)」だ。これは、インターネットで仲介し、使っていないモノや場所を貸し借りする仕組みで、海外で先行して普及し、日本でも広がってきた。一般住宅に旅行者を泊める民泊や、短距離でも気軽に借りられるカーシェアリングサービスは人気だ。とくに大きな盛り上がりを見せるのが、「シェアサイクル(自転車)」である。

中国の自転車シェア大手が福岡に進出

 天神経済新聞(2017年12月22日付)は、『モバイク・ジャパン(福岡市中央区大名2)は12月22日、福岡市内で自転車シェアサービス「Mobike(モバイク)」の実証実験を開始すると発表した』と報じた。

〈国内では、17年8月にサービスを開始した北海道・札幌市内に続く2カ所目。福岡市内で専用自転車を利用できるサービスで、駐輪場に停車しているGPS機能を搭載した専用の自転車をスマートフォンのアプリを使って予約、解錠して、目的地まで乗った後施錠すると利用が完了。同車体は空き自転車として表示される仕組み。
 実証実験として用意したのは100台で、姪浜エリアなどに駐輪場2カ所を設ける予定という。具体的な場所は未定。本格導入は18年1月を予定し、駐輪場は10カ所に増やす。18年末には1,000台、1万人の登録を目指すという〉

 モバイクは16年4月に中国でサービスを開始し、シンガポールや英国でも事業を拡大している。日本では無料対話アプリLINE(ライン)と提携し、利用者の囲い込みを狙う。

セブン-イレブンが、ソフトバンクと組みシェア自転車を本格化

 シェア自転車に、大手が参入してきた。コンビニエンスストア最大手のセブン-イレブン・ジャパンは17年11月21日、自転車のシェアサービスを拡大すると発表した。
 ソフトバンク系のシェアサービス「ハローサイクリング」と提携し、18年度末までに1,000店に自転車5,000台を設置する。まず、埼玉県さいたま市内の9店でスタートし、18年春をメドに神奈川県川崎市と横浜市、18年度中に全国の主要都市に広げる。
 料金は地域や時間帯によって異なるが、15分60円ほど。スマホでシェア自転車を利用できる店を検索し、利用時間に応じて登録したクレジットカードで支払う。自転車はシナネンサイクル(東京都港区)が提供し、GPS(全地球測位システム)付の鍵で管理する。

 これまで、観光名所やリゾート地の移動手段としてのレンタルサイクルはあったが、都市部で日常生活に使う自転車を共有するという発想はなかった。自転車シェアは、地方自治体が長年取り組んできたテーマだ。駅前の放置自転車に、頭を悩ませていたからだ。

 突破口になったのは、NTTドコモが11年に横浜市で始めた実証実験からだ。スマホを利用するシステムというかたちで、全国各地の自治体と連携。15年には専業の子会社のドコモ・バイクシェア(東京都港区)を設立した。セブン-イレブンはドコモ・バイクシェアと提携して、都内を中心に30余店に約150台のシェア自転車を置いているが、ソフトバンク系サービスを活用することで、一気に規模を拡大する。

 セブン-イレブンがシェア自転車サービスを拡大するのは、来店客数を増やす狙いがある。セブン-イレブンの既存店の来店客数は、17年7月から11月まで5カ月連続前年割れ。10月の既存店の売上高は、12年7月以来、63カ月ぶりに前年実績を下回った。11月も2カ月連続の前年割れだ。17年3~8月期の全店の平均日販は66.3万円とコンビニ業界では断トツだが、前年同期より4,000円減少した。

 裏を返せば、ドラッグストアに押されて来店客数が減っているという事情がある。コンビニは弁当やおにぎり、飲料などの食料品のほか、日用雑貨などを扱うが、コンビニの成長を支えてきたのは絶え間ない新サービスの追加だった。公共料金の支払い、宅配便の受け取り、ATMでの現金引き出し、チケットの購入など、コンビニは新たな機能を加えるたびに、周辺の市場を侵食しながら利用者を広げてきた。だがここにきて、来店客数が伸び悩んでいる。集客力を高めるべく、比較的伸びているサービスをさらに充実させる。その1つがシェア自転車の拡大だ。

(つづく)
【森村 和男】

 
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(2・後)

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