まちづくりへの貢献が本格化 「都市をデザインする」デベロッパー(後)
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西武ハウス(株)
2017年2月期に売上高が100億円を突破した西武ハウス(株)は、18年2月期でさらなる増収増益を達成する見通しだ。創業35周年を迎え、別次元の経営へシフトする同社は今年、「都市デザイン」という新たなステージに突入する。
バブル、リーマンを乗り越えて
同社は1983年8月に創業、85年7月に法人化されたもので、現在では「モントーレマンション」を供給する福岡のマンションデベロッパーとして高い知名度を誇っている。あまり知られていないのは、設立当初の2年間は戸建住宅の販売、その後の2年間は賃貸マンションの1棟売りを行っていたことだ。同社がマンション分譲を本格的に開始したのは90年からで、その後は一貫して「モントーレ」シリーズのマンションを供給してきた。企業理念に「時代(とき)を越えて残るものを」を掲げており、ブランド名「モントーレ(壁時計・置時計の意)」は、企業理念に由来する。バブル崩壊およびリーマン・ショックを乗り越えた数少ない地場デベロッパーであり、福岡のデベロッパーとして初めて住宅性能表示制度に対応した分譲マンションを発売するなど、品質へのこだわりが強い企業である。
代表の豊福清氏は、(株)ダイエーを経て不動産業界で経験を積んだ後、同社を創業。業界団体・九住協の副理事長を務めた経験もある。従業員は30名強で推移しており、営業社員の定着率も高い。もともと成果報酬に重きを置いた営業スタイルが一般的な業界で、同社は長期的に営業を育てる方針を採用してきたからだ。
2014年1月に薬院から現在地に本社を移転した。同地は以前に(株)アキラ水産から取得していた1,500坪の土地で、ここに分譲マンション、賃貸マンションと本社を建築した。また、14年6月に資本金を3,000万円に減資しているが、これは長らく計上していた自己株式2,500万円を償却したもの。関連会社には100%子会社で、ビル管理業の(株)ラコルタ・ライフ・サポートがある。
30周年プロジェクトも成功
小ぶりながらも品質に優れ、ハイセンスの物件を供給することで基盤を固めた同社が、初めて取り組んだ大型物件が西戸崎の「モントーレ・ブルー・ラ・メールfukuoka」である。総戸数315戸の大型物件で、07年4月に竣工した。同社は、この大型物件「モントーレブルー・ラ・メールfukuoka」を周囲の予想を裏切り順調に売り切った。この物件は、同業者を中心に「かなり苦戦するのではないか?」という見方をされていたが、実際にはほぼ予定通りに完売した。
「ブルー・ラ・メール」と入れ替わる格好で、同社のマンション分譲の中心と位置付けられたのが「モントーレラコルタユニバ通り」(共同住宅部分183戸)だ。このプロジェクトは当初、同じマンションデベロッパーのソロンコーポレーションから購入した「hit展示場跡地」6,700坪に、賃貸マンション、商業施設、分譲マンションの3つを開発し、賃貸マンション、商業施設部分はファンドに売却される予定だった。だが、サブプライムローンに端を発する不動産市況の落ち込みで、ファンドへの売却がなくなった。このため福岡で初となるシニア向け分譲マンション開発に計画を変更した経緯がある。
「モントーレラコルタユニバ通り」は同社の創業30年を記念したプロジェクトとなり、13年6月に竣工した。豊福社長自身の親の介護の体験から、介護と医療のソフト、ハード両面を完備し、24時間体制での介護スタッフ常駐と医療機関との連携によるシステムを導入した。老人ホームの利用権方式と異なり、所有権方式で資産性の高い住居として高い注目を浴びた。周年事業に相応しく社会貢献も組み込んだ優れた物件と評価され、この物件も予定を上回るハイペースで売り切った。
別次元の経営で香椎浜を完遂
08年のリーマン・ショックでとん挫した、ユニカの香椎浜プロジェクトを同社は引き継ぎ、着々と実績を積み上げている。もともとユニカが開発し東京の業者が一括で買い取るスキームだったのだが、リーマン・ショックが不動産業界へ波及し、金融機関の支援が受けられないとの理由でキャンセルとなった。事業主のユニカは西武ハウスにプロジェクトの継承を頼み、同社がB、Cブロックの事業を完遂した。このプロジェクトは2ブロックで70億円を超える大型案件となった。その後に手がけたDブロック「モントーレ香椎浜サーフタワーイーストウイング」(332戸)総事業費80億超の販売も、現在ではほぼ終了した。次に控えるのは最終Eブロック、500戸超の物件である。総事業費は200億円を超える計画のようだ。本社前の通りの一部をファンドに売却したのも、同地に必要な商業施設は商業施設開発のプロに任せ、自社は香椎浜を中心とするマンション販売に注力したい、との考えがあったためだ。
福岡で代表するデベロッパーであるとは言っても、ユニカの計画がストップした後に、同社がここまで香椎浜のプロジェクトを完遂することを予想した人はいなかったのではないだろうか。規模的に見ても地場デベロッパーには負担が重く、さらに他のデベロッパーが途中まで企画を進めていたというのもマイナス要因にしか見えなかった。純粋に自社で企画したプロジェクトではないため、ハンデがある物件であり、大手デベロッパーが引き継ぐ以外に出口がない印象だった。それを時流を見極めながら、自社のほかの開発物件とスケジュール調整し、十分な収益を上げる物件へと昇華させた豊福社長の経営手腕は見事なものだ。商品としての質、販売する環境、不動産市況の状況、自社の経営状況など、すべてを緻密に分析し、コントロールした結果だろう。別次元の経営へと進化を遂げた同社が、今後さらに展開するであろう「まちづくり」「住まいづくり」は、どのような「都市デザイン」となるのか、興味が尽きない。
(了)
【緒方 克美】<COMPANY INFORMATION>
代 表:豊福 清
所在地:福岡市中央区長浜3-16-6
設 立:1985年7月
資本金:3,000万円
売上高:(17/2)101億793万円関連キーワード
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