林業の大隅と歴史の飫肥 現有資産の最大限活用で地域活性化(中)
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九州地方の最南部に位置する2つのエリアで、経済活動が進化し続けている。1つ目は、鹿児島県と宮崎県の森林組合が連携した木材輸出促進協議会が取り組む、林業を通しての地域活性化。2つ目は、宮崎県日南市にある城下町・飫肥の城下町保存会が中心となったまちおこし。両エリアの取り組みに共通するキーファクターは『現有資産の最大限活用』である。
円安と中国市場への進出
翌13年に入ると円相場は徐々に円安傾向にシフトし、若干の高低はあったものの1ドル100円を超える状態が継続し、輸出事業の光明がみえてきた。さらに、中国からの注文が始まり、時間経過につれて激増の一途をたどった。中国はそれまで、木材輸入先はロシアが中心となっていたが、ロシアは自国の林業分野について、高付加価値化が不十分であることが問題視されていた。
このため、ロシア政府は原木を中心とした輸出から、付加価値を高めた木材製品の輸出にシフトすることを目指し、07年2月に丸太輸出関税を段階的に引き上げた。それまで6.5%だった針葉樹丸太の輸出税率を07年7月から20%に、08年4月からは25%に引き上げた。「その関税引き上げが大きな要因で、ロシアからの供給に期待できなくなり、国内の樹木伐採を禁じている中国は、輸入先を日本にシフトしたのです」(堂園組合長)。
中国への輸出を始めたことで、13年度の輸出量は2万6,000m3に激増。その後、中国の建築物に関する法律の改正を受けて、中国への輸出量は増え続けた。16年度の輸出量は、約4万m3となり、17年度は、5万m3を超える見込みだ。そのうち約90%が中国への輸出である。
同協議会の取り組みにより、大隅地方の林業は復権し、斜陽産業とは真逆の成長産業へ進化し続けている。「山林の所有者、製材所、そして輸出を手がける商社との連携が今日の活況をつくりました。協議会設立以前は、森林組合の会合ではマイナスな話題ばかりでした。それが、輸出というきっかけから、関係者が一丸となり真摯に取り組んだことで、このような成果を得ることができました。もちろん志布志市を始めとする行政のサポートもあってこその話です」(堂園組合長)。同協議会の、エリアの垣根を超えた活動は稀有なケースとして全国から注目を浴び、多くの林業・木材業界関係者、行政関係者が、業界の再生の様子を視察に訪れている。
現在中国へ輸出する丸太の用途は、機器梱包用・パレット材・土木用の型枠用が主力である。これらは中低質の丸太である。高級な丸太は、中国で加工して北米向けに住宅のフェンス用の資材として輸出している。同協議会は、大隅で北米向け丸太の加工と輸出を行うことができないか、計画立案中だ。
「宮崎飫肥杉は、日本のスギのルーツと言っても過言ではありません。国内各地のスギは、飫肥杉から広まっていきました。世界的にもトップクラスの材質で、水分と脂成分のバランスが絶妙です。そして耐久性にも優れており、幅広く活用できることで重宝されています。この優れた丸太を、我々の地域で付加価値をつけて輸出の事業を展開します」(堂園組合長)。
その計画とは、志布志市に企業を誘致し、丸太を製造加工する拠点を設けることである。製材対象になる樹齢40年以上の樹木は、同協議会内には年間最大30万m3あり、半世紀先まで供給は維持できるという。また、これまで使い道に乏しかった間伐材も、バイオマス燃料などに活用し、無駄のない循環型の林業がつくり上げられている。
輸出と循環型事業の両輪で、斜陽産業とされてきた林業を再生することで、陸の孤島と言われた大隅半島を活性化し、次世代の人々が付加価値のある林業で幸せになることを目指している。
(つづく)
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