2時間では終わらない京都事件簿
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ミステリーの里
京都では事件がよく起こるらしい。
毎週、何かしら「事件が起こった!」とテレビドラマで言っている。私も何か事件に巻き込まれるのではないか、と緊張しながら京都入りした。
実際、1日目のバスツアーでは黒い帽子、黒いコート、黒いサングラス、黒い手袋……と、全身黒ずくめの女性が1人で参加していたので、これは事件が起こる雰囲気がプンプンするぞ、と警戒したものだった。
さらにツアーの途中では、美人の法医学研究員が所属する科捜研のある京都府警へうっかり連れて行かれそうになった。油断ならない。癒しを求めて夜の京都駅周辺へ
事件に巻き込まれないか心配しすぎて疲れた私は、夜景を見て心を癒そうと夜の京都タワーへ上がった。
この京都タワー、ほかの建物が高さ制限で低いため、よく目立つ。今回の初めての京都旅行では目印になって非常に助かった。
さて、タワー内の展望室は……まずい、カップルがあちこちにいる。これは痴情のもつれによる事件が起きるのではないか?癒されるつもりが、ますます警戒することになってしまった。
カップルだけでなく、友人同士で来ているお客さんも多かった。聞こえる訛りはほとんど関西のもの。この日は地元のお客さんが多かったのだろうか。京都タワーから降りた私は、京都駅をしばらく散策することにした。
京都へ来る前は、街中が古い建物だらけのイメージだったが、新しい建物も多い。そういえば、昼に参加したバスツアーのガイドさんも
「京都は古いものが多い印象でしょうけど、新しいものも多いんですよ」
と、京都訛りで言っていた。
現在の京都駅は1997年完成だが、長い京都の歴史を考えれば「新しいもの」に分類しても良いだろう。直線定規では簡単に描けないようなデザインに興味を持ち、外部も内部もよく観察してみる事にした。吹き抜けを上るエスカレーターに乗っていると、東広場の上空から怪しげな月が姿を見せる。見とれているうちに、いつの間にやら吹き抜けを見下ろせる階まで来てしまった。これ、サスペンスじゃなくて妖怪とかが出る方の雰囲気ではないのか。
上からの景色を眺めながら、のんびり歩いていると……む、柱の陰に人影が。これが事件の始まりだったらどうしよう。まさか私が「キャー」と悲鳴を上げる役に!?
と、思っていたらベンチに座って本を読む人だった。ほかにも、1人静かな時間を楽しんでいる人がちらほらいた。私は安堵した。事件は起こることなく、無事に一日目を終えた。
刑事さんが歩いて(走って)そうな川へ
二日目は、テレビドラマによるとよく事件が起きたりするという鴨川デルタへ。
川には飛び石がかかっている。亀の飛び石もあって可愛らしい。しかし短足な私が渡ると、足をグキッとする→川に流される……と、私自身が事件になってしまいそうだったので、無理せず眺めるだけにした。そのため、とくに事件にならずに済んだ。次に、電車で移動し祇園四条へ。む、ここは事件が起きそう。名探偵や刑事などが川床で食事をしながら、事件について話してそうである。話してるうちに何かを思い出してお店を飛び出し、走っていきそうな河原である。
しかし、この時期に川床はもちろんなかった。が、雰囲気だけは楽しんだ。「京都」「事件」とくれば
最後に向かう現場は、「京都」「事件」とくれば。
そう、鉄道である。私は京都鉄道博物館へと向かった。車両の展示だけでなく鉄道の歴史、車両本体の仕組みから、信号機や自動改札機など、鉄道に関するありとあらゆるものが展示された、大変中身の濃い博物館だった。
圧巻なのは、実際に動く蒸気機関車と転車台。これには大興奮して、事件のことなどすっかり忘れてしまっていた。事件が多いとテレビドラマでは言っている京都だが、幸い、今回の旅では事件に巻き込まれる事はなかった。
京都は、1時間か2時間位で解決するサスペンスドラマと違って、2日だけではまったく足らず、(つづく)と付けたくなる。
都(みやこ)全体が、過去と現代を漂っているような不思議な体験ができる大きなテーマパークのようだった。【増田 亜衣子】
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