2024年11月23日( 土 )

福岡「建設×不動産」業界の雄2社対談 どうなる今後の業界動向(前)

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 マンションの企画・開発・販売を手がけ、昨年東証一部上場をはたした(株)コーセーアールイーと、福岡県の地場独立系ゼネコンで売上高トップを誇る上村建設(株)。今号は、そのコーセーアールイーの代表取締役・諸藤敏一氏と、上村建設・代表取締役の上村秀敏氏、常務取締役の上村英輔氏の三者による対談が実現した。両社が考える業界の動向や今後の目標などを語ってもらった。

(聞き手:弊社代表取締役・児玉 直)

(株)コーセーアールイー 代表取締役 諸藤 敏一 氏
上村建設(株)      代表取締役 上村 秀敏 氏
             常務取締役 上村 英輔 氏


福岡という「地の利」

 ――過去の対談企画では「大いに刺激を受けた」と、その後の事業に発奮された方が多数いらっしゃいます。今回もそのような機会になれば幸いです。さて、2社の馴れ初めをお聞きしたいのですが。

 上村秀敏氏(以下、秀敏氏) 諸藤社長のお名前は、かねがね聞いておりました。2015年8月のグランフォーレ大手門の竣工時に、お礼の挨拶に、とコーセーアールイーに出向き、諸藤社長にお会いしました。以降、今日まで計5棟の受注をいただいている大切なお客さまです。

 諸藤敏一氏(以下、諸藤氏) 意外に思われるかもしれませんが、出会いはその時が初めてでした。その後の物件も仕上がりが良く、ほとんどクレームがありませんでした。実績も十分ですし、実際の仕事も非常に丁寧だと感じています。

 ――業界の動向についてお聞きしたいと思います。諸藤社長は東京にも事業を展開されていますが、マンション市況の現在はいかがでしょうか。

(株)コーセーアールイー 諸藤 敏一 代表取締役

 諸藤氏 正直言って、業界全体としては良くないですね。三大都市圏に加え、九州・福岡に一極集中の状態で、弊社は地の利で生かされていると思います。ただ日本全体で考えると、人口減で空き家が増加している状況下、新規物件を供給するのは時代に逆行しています。たまたま福岡は人口増が続き、恵まれた環境で仕事をさせていただいており、本社が福岡にあることで救われていると感じています。

 仮に本社が他県にあった場合は、ほかのエリアに打って出るしかない。増収増益を求めるなら、福岡を出る覚悟を持たないといけません。福岡市は人口150万人を超えて、さらに伸びています。しかし、仮に10%市場占有率だとしても、せいぜい400~500戸の供給販売になるのです。

 ――上村常務からみて、現在の福岡県の建設市場はどのような状況にありますか。建設需要では、5%取り込めれば莫大な額になりそうです。

上村建設(株) 上村 英輔 常務取締役

 上村英輔氏(以下、英輔氏) 弊社は賃貸物件の請負施工がメインです。市況は堅調に推移していると感じています。マイナス金利の影響で、金融機関も低金利になっていますが、適正な水準で審査をするようになったという印象はあります。建設コストは上昇していますが、弊社のビジネスモデルは土地代と建物、そして家賃の収支が合わないと成立しません。今は家賃をいかにして上げるかを重要視しています。

 話題のAIやIoTなどを付加価値にした次世代の賃貸マンションを提供できるよう、昨年九州電力グループの(株)QTnetと業務提携をしました。各住戸にひかり回線を引き込むことで、利用者が大容量の情報を利用することを可能にし、それを付加価値とする取り組みを始めました。自社での努力にも限りがありますので、さまざまな企業と連携をし目標に向かって進んでいます。

新たなビジネスモデルの構築を

 ――市内の至るところに「ウエムラ」の看板を見かけます。九大跡地や天神の再開発などでも、「ウエムラここにあり」という地場トップの意地を見てみたいものです。

上村建設(株) 上村 秀敏 代表取締役

 秀敏氏 ご承知のように、弊社はどちらかといえば郊外での開発をメインとしてきました。創業者も「都市部に看板を!」という強い思いがあったものですが、そうそう案件は見つかるものではありません。地価の動向からしても、都市部で無理ができませんが、チャンスがあれば諸藤社長とタイアップしてやりたいと思いますね。

 ――諸藤社長が都市部で一棟売りをどんどん増やしてくれればいいですね!探してください土地を!

 諸藤氏 いや、土地がないですね。最近の博多駅周辺の土地の入札も、あり得ない金額まで釣りあがっていました。弊社でも、かなり無理をして取りにいったのですが、落札金額には遠くおよびませんでした。土地は限られています。海を埋め立てるわけにもいきません。

 ――地価が下がり始めたという話も多く聞かれますが。

 諸藤氏 下がっていますよ。東京も間違いなく下がっています。これまで京都と福岡だけ下がらなかったのが、ここにきて京都が反転しました。全国的にみても、まだ上昇が続いているのは福岡だけかもしれない。
 某大手金融機関の支店長と話す機会がありまして、東京の大手デベロッパーから相談が来ていると。その相談というのが「福岡に支店を開設したいので、事務所や土地を探してほしい」と。その数が1つや2つじゃなく、10社ほど。
 東京ではもう土地が高すぎて勝負にならない。港区や中央区辺りでは、財閥系のデベロッパーしか買えなくなってきています。銀行系ルートで、これまで外に出していた情報をグループ内で処理しているようです。東京でもそのような格差が生まれているということです。本音をいえば、福岡ではなく、大阪や名古屋に進出してもらいたいものです。

 ――福岡県、そして福岡市の商圏で今後、どう商機を見いだしていくのでしょうか。

 秀敏氏 好況な現状にあぐらをかいているわけにはいきません。幸い、福岡はまだ潜在能力を秘めていますが、新しいビジネスモデルの構築をしていかねばならないと思っています。

 ――九大学研都市は福岡市のなかでも、注目ポイントにされているのでしょうか。

 秀敏氏 そうですね。弊社の施工実績も多いところですから、糸島市と九大伊都キャンパス周辺では学生数の増加を踏まえてマンション事業を積極的に進めています。

 英輔氏 そのエリアはインフラがもう少し整えば、より人気が高まると思います。駅周辺はずいぶん成熟してきましたので、調整区域の多い大学周辺の開発の動向には注目しています。

(つづく)
【文・構成:東城 洋平】

 
(後)

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