中国で急激に浸透したQRコードの今後の課題(前)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
スマートフォンの普及によって、私たちの日常生活に大きな変化がもたらされている。とくに現金やクレジットカードを使わないモバイル決済は、従来の決済方法より便利で、その利用が急激に増加している。中国でモバイル決済が今のように浸透するようになった一番の原因はQRコードである。今回はそのQRコードが普及した背景と使用状況を取り上げてみる。
QRコードは、日本の(株)デンソーウェーブが既存のバーコードの情報量不足を解消するため、1994年に開発したものだ。 QRコードは既存のバーコードと違い、水平、垂直2次元に情報を保存するようになっていて、バーコードの数10倍の情報が保存できる。
QRコードは 「Quick Response」の頭文字をとったもので、情報認識のスピードが速いことを意味している。実際QRコードはほかのコードに比べ、10倍ぐらい認識が速いという。またQRコードはコードの半分が損傷されても、データの復旧が可能で、スキャンのエラー率も1,000万分の1に過ぎないことも大きな特徴のようだ。QRコードは当初、トヨタ自動車の在庫把握に利用されていた。その後、2000年代に携帯電話でQRコードを認識する技術が登場したことで、QRコードはマーケティング、製品の広報などに活用されてきた。
日本では、QRコードを読み取り、そこでサイトにアクセスして、動画を見たり、情報を取得したりするのが主な利用方法だった。ところが、デンソーウェーブがQRコードの特許情報を公開し、特許権を主張しないと宣言したことによって、QRコードの技術は全世界に拡散されるようになった。その結果、現在の中国のようにQRコードがモバイル決済にも利用されるだけでなく、いろいろな場面で活用されるようになったのだ。モバイル決済にはさまざまな方法が実用化されていて、どれが主流になるのか、まだ決着がついたわけではない。しかし、中国を中心にQRコードを利用したモバイル決済は大きくシェアを伸ばしており、市場規模は38兆元(約620兆円)と、その成長の勢いには目を見張るものがある。
中国では中国のIT大手であるアリババとテンセントが開発した決済フラットフォームの「アリペイ」と「ウィチャットペイ」がQRコードを導入したことで、QRコードの使用が一気に拡大した。
会員数が8億人を上回っているウィチャットは連絡先情報を交換する手段としてコードを提供し、このコードを電子ウォレットと紐付け、決済サービスを提供した。ウィチャットのアプリは、すでにほとんどの会員がダウンロードしていて、それによってQRコードは急激に普及するようになった。ウィチャットペイを使って他人に送金したり、決済したりするのは中国人の日常生活になっている。
(つづく)
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