2024年12月04日( 水 )

ド派手なセレブ生活から原点回帰へ(3)~(株)ストーンマーケット

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 天然石アクセサリー販売と名物社長のド派手なセレブ生活で一世を風靡した(株)ストーンマーケットだが、近年は業績低迷からリストラを余儀なくされている。メディア露出もすっかり影を潜め、地道に原点回帰を目指しているようだ。

事業多角化を目指したが

 ストーンマーケットの1号店は1994年、熊本市上通町にオープンした。すでにバブル経済は崩壊しており、九州の景気も低迷していた。新規事業を始める時期としては良いタイミングではなかったが、中村社長は「景気が悪い時こそチャンスだ」と勝負に出た。その後、破竹の勢いで出店した同社は、ピーク時には150店舗超える規模にまで成長を遂げた。今でこそ、自分でオリジナルのアクセサリーをつくる人も増えたが、比較的安価な天然石のアクセサリーブームをつくったのは間違いなく同社である。

 高価なブランド品か、安物のイミテーションしかなかった市場で、ミドルクラスのアクセサリーは新鮮だった。女性だけでなく男性にまで購買層が広まったことが、同社の成長をさらに後押しした。また中村社長が積極的にメディアに露出し、著名人や芸能人と華やかな交流をするという話題づくりにも成功した。社長自らが広告塔となるビジネスモデルで成功を収めたのである。

 だが成功する企業があれば、追いかける企業が出てくるのが市場の論理。ライバルや類似商品を扱う企業が増えていく中で、同社の業績は徐々に伸び悩み始める。もともとミドルクラスのアクセサリー市場は、不景気で高級品が売れない時代に、新たに生まれたデフレ対応型のビジネスモデルといえるものだ。消費者は移ろいやすく市場は常に変化するため、同社よりさらに安価なアクセサリーを求める購買層と、高級品に向かう層が出始めた。消費者が二極化していくことで、ミドルクラスのアクセサリー市場は徐々に埋没し、同社がメインターゲットにしてきた市場も縮小し始めたのである。販売の低迷と仕入れ価格上昇の板挟みで、採算性が悪化していったのが実情だろう。

 市場の縮小とコストアップによる収益力の低下は、資金面の制約から事業展開の自由度を奪う。出店戦略では商業施設に入るのが、集客やコスト面から考えて費用対効果が大きい賢明な策に思えるのだが、一方で契約に縛られて簡単には撤退できないという問題も抱える。とりあえず場あたり的に出店しても、不採算店舗になれば、不良資産化した店舗を抱え込んでしまうことになる。天然石アクセサリービジネスが頭打ちになった同社は、その利益を飲食事業に注ぎ込んでいくことになる。飲食ビジネス進出という事業の多角化によって生き残りを図ったのだ。

(つづく)
【特別取材班】

 
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