韓国経済危機説の真相(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
サムスンの主要輸出品目のなかで、半導体だけが好調で、携帯電話、テレビなどは毎年世界シェアを落としているのが現状だ。もう1つ、韓国経済危機説の要因としては、家計負債の問題がある。家計負債が1,500兆ウォンぐらいあり、韓国政府は米国の利上げでも金利を上げずいない。しかし、海外への資金流出を防ぐためには、利上げに踏み切らざるを得ない時期が来るだろう。十分な資金蓄積のない韓国経済にとって、それは大きな試練になるといえる。
現在もそのような兆しが一部で表れ始めている。好景気で浮かれていた時期とは打って変わり、造船、自動車産業が栄えていた巨斉島、群山などには、閑古鳥が鳴いており、街は廃れている。それは統計庁の統計にもはっきり表れている。
2018年3月の統計によると、韓国の公式失業率は4.5%で、実質失業率では12.2%、2001年以降の最高値を記録している。若年層の失業率はもっとひどくて、公式失業率は11.6%で、実質失業率は24%に達している。しかし、肌感覚では若年層の失業率は40%台ぐらいに感じる。10人中4名は職に就いていない状況ということになる。
受験戦争を勝ち抜いて有名大学を卒業しても、就職できない学生が増え続けているということだ。それだけではない。設備投資と生産も減少している。全産業の生産は1.2%減少しているし、設備投資は7.8%が減少し、2008年の世界金融危機時と、ほぼ同じ状況に置かれていることが判明した。工場の稼働率は70%で、10の工場の内、稼動していないところが3つもあるということになる。
韓国の国内消費が占める比重はまだ3割ぐらいで、韓国経済の企業への依存度が高いことが問題だ。輸出が伸び、企業の業績が伸びると、韓国経済は好転する反面、輸出が低迷し、企業業績が悪くなると、設備投資、生産、雇用などにすぐ影響が出る脆弱な経済体質である。韓国経済の状況が悪いことは、在庫比率114.2という数値にも、如実に表れている。アジア通貨危機以降でみると最高水準のようだ。
ところが、韓国経済危機説に対する反論もある。輸出増加率は前年同期対比で15.8%の増加で、今年も毎月500億ドル以上の輸出を維持している。この事実をみると韓国が経済危機とは到底いえない。それに、今年の第一四半期の民間消費の増加率は前年同期対比で3.5%も伸びていることも挙げられている。
昨年までサード配備の問題で中国観光客の訪韓が急激に減少し、韓国の経済に大打撃を与えていたが、それも徐々に解消に向かっている。今年1~3月の韓国を訪問した中国人は133万2千人で、前年同期対比で23.8%の増加へと転じている。
また、海外に出かける韓国人の数をみても、韓国経済が危機になるとは言いがたいとしている。昨年の海外訪問者数は、2,650万人で、これも前年同期対比で18.4%増加している。まだ懐に余裕があるという証拠である。
最後に、最近朝鮮半島の非核化をめぐって、いろいろな動きがある中、南北の関係改善が順調に進み、北朝鮮の経済開発への投資が実施されれば、韓国経済の活性化につながり、これも韓国経済危機説とは合わないと主張する向きがある。
経済環境が急激に変化する時期であり、従来の産業が衰退する過程で表れる現象をはたして危機とみなしていいのか、もっと様子を見る必要があるということだろう。
(了)
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