2024年12月05日( 木 )

復旧よそに北海道旅行~筑紫野市議会議長らのあきれた感覚

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 6日から翌未明にかけて西日本を襲った記録的な大雨で、大きな被害を受けた福岡県筑紫野市の市議会議長を含む5名の議員と職員2名が、今月10日から12日までの日程で北海道への視察旅行を行っていたことがわかった。
 同市では、濁流にのまれた68歳の女性がなくなったほか、中心部の西鉄二日市駅に近い「にしてつ通り商店街」が冠水したり、河川沿いの道路が陥没するなど被害が続出。市議らが旅行に出かけた10日から12日は、市内各所で復旧作業が続いている最中だった。
 北海道旅行には筑紫野市議会の議長も同行しており、市民から議員の資格を問う声が上がりそうだ。

 筑紫野市議会の北海道旅行は、市議会建設環境委員会が計画したもの。3日間で北海道千歳市、恵庭市、札幌市の各都市を訪ね、商店街活性化やバリアフリー事業について自治体側の説明を受けたり、現地を視察する予定となっていた。一行は10日に福岡を発ち、12日に筑紫野市に帰ってきている。

 議会事務局の説明によれば、視察には議長を含む4名の市議が参加し、議会事務局の職員2名も同行。1人あたりの旅費は8万8,000円で、総額61万6,000円の公費がかかっている。

 問題は旅行の日程。6日から8日にかけて西日本を襲った記録的な大雨は各地に爪痕を残し、筑紫野市内でも多数の被害が確認されている。議員らが北海道に旅行した期間は、被災地の復旧が始まったばかりの時期で、多くの市民が不安を抱える状況だった。

西鉄二日市駅付近、鷺田川横道路崩落
(7月8日撮影)
復旧作業中の西鉄二日市駅付近、高尾川
(7月18日撮影)

 こうしたなか、北海道に視察に赴く必要性があったのか――。建設環境員会の視察目的を確認してみると、次のようになっている。

【12日】千歳市:商店街活性化の施策について
【13日】恵庭市:バリアフリー特定事業計画の概要について
【14日】札幌市:商店街活性化支援事業の概要について

 地元である筑紫野市の復旧作業が緒に就いたばかりの時に、他都市の商店街活性化などについて視察することが、喫緊の課題といえるのか?問われた多くの市民は、「NO」と答えるだろう。

 どういう判断で北海道に出かけたのか――。合同取材していたニュースサイトHUNTERの記者が、視察に参加した市議会議長・横尾秋洋氏に、話を聞いた。


 ――10日から北海道に視察に行かれたということですが、議長も行かれたということで間違いありませんか。
 横尾
 ええ、行っております。

 ――今回の西日本豪雨で、筑紫野市の被害を受けた場所が何カ所あったかご存知でしょうか。
 横尾
 はい、報告は受けております。

 ――報告は受けていらっしゃるのですね。
 横尾
 ずっと詰めてましたから。

 ――何に詰めていたのですか?
 横尾
 詰めているというか、いろいろな会議には出ていましたから。

 ――会議には出られていた。10日の段階でも復旧作業は続いていましたよね。
 横尾
 そうですね、今も続いてますからずっと。

 ――そうしたなかで10日から北海道に行かれたということについて、不適切だったと私どもは考えているんですが……。
 横尾
 あれは建設環境委員会のなかでみんなで協議して、「災害だからどうしようか」と。そこでキャンセル料などいろいろ考えたところ、委員会のなかで決定して「行こう」ということになりました。私は議長ですからメンバーではなかったんですけど、どこかに行こうということで、建設環境のところで行きましょうということで同行したんですね。

 ――キャンセル料について考えられたと。
 横尾
 ええ。

 ――1人あたりいくらくらいかかったんですか?
 横尾
 1人10万円の予算ですから、10万以内では収まっていると思いますけど。

 ――正確にいくらだったかはご存じない?
 横尾
 ええ、まだ報告を受けておりません。会計担当者が計算しますから。

 ――キャンセル料がいくらかかるかはご存じだったんでしょうか。
 横尾 そのときも聞いてました。

 ――いくらだったんですか?
 横尾
 はっきりと覚えていませんけど、60%くらいがキャンセル料としてかかるんじゃないかなということだったんですね。

 ――60%ね。それで協議されたなかで、やっぱり行くと。
 横尾
 委員会のなかで決定してですね。

 ――議長はそこに入っていらっしゃらない。
 横尾
 ええ、私は入っておりません。

 ――では、議長はどうして北海道に行こうと思われたんですか?
 横尾
 議長はですね、総務委員会かどこかで(同行して)行くということでいいんですけど、私は前もって建設環境のなかで行きましょうということで3カ月ほど前から決まっておりました。

 ――この時期には市民に寄り添うべきだという意見はなかったんでしょうか。
 横尾
 そういう意見もありました。しかし最終的にどうしようかということで決めて、委員会のなかで全員が一致したもんですから。

 ――市長は地元に残っていました。議会側のトップである議長としてですね、「これはまずい」という考えはなかったんでしょうか。今は地元で市民に寄り添うべきだという意見はなかったんでしょうか?
 横尾
 我々も議会で、危機対策ということでいろいろなマニュアルをつくっているんです。正副議長が待機をしていて、各議員は地域のなかで待機をしましょうと。そこでいろいろな情報をとって、直接災害対策本部に電話をするのではなく議長に連絡し、議長が本部と対策を協議しますというルールをつくっています。そういうなかで、私も災害対策本部の会議に出て、状況をずっとつぶさに聞いて。6、7、8日と非常に厳しい状況だなと感じるなかで、そして状況が一段落して10日から(視察)ということで。ずっと協議をしておって、私は「委員会の判断に任せますから行きましょう」ということで視察に同行したんですね。

 ―― 一段落というのは、雨が一段落ということでしょうか。
 横尾
 ええ。その状況もずっと把握してましたから。私も地域のなかで走り回ってですね、「この状況なら市執行部もちゃんと対策をとっているから、そのなかで見守っていけばいい」という判断をしています。

 ――北海道からは見守れないですよね。
 横尾
 いやあの、なんていうかな……。

 ――ではもう1つ。建設環境委員会って、まさに復旧復興に向けての対策を所管する、当事者委員会ですよね。
 横尾 しかしあの、その災害のときに一気に復旧できるわけではないですから。

 ――それを市民の前でおっしゃれます?言えますか?「すぐに復旧復興できるわけではないから自分たちは北海道に行ったんだ」と言えますか?
 横尾 そういう意味じゃなくてですね……。

 ――そうおっしゃったんじゃないですか。それが本音でしょう。
 横尾
 見守っていくということでいいんじゃないですかね。

 ――北海道から見守れるんですかって聞いてるんですよ。
 横尾
 それは、常に情報が入っていますから。

 ――情報が入れば良いんですか。現地には行かなくていいんですか?
 横尾 現地には行ってますから。

 ――いやだから、復旧の途中でなにがあるかわからないわけでしょう。それは無責任だと思いますよ。
 横尾
 そうですかね……。

 ――本気でおっしゃってるんだったら、とんでもない無責任です。政治家の資質を疑われると思います。
 横尾 総合判断して、行くことにしたのは間違いないということで……

 ――議長が止めるべきだったんじゃないですか。
 横尾 うーん……私はそのときはそう判断しませんでした。


 災害が起きて、復旧作業が始まったのは筑紫野市。北海道から見守ることなどできないことは、子供でもわかる話だろう。キャンセル料の原資が税金であるのはたしかだが、市民の安心・安全を守るのが政治や行政の使命であるなら、筑紫野市議会の判断は明らかに間違いだ。

 視察と復旧――。どちらが優先されるべき課題であるのか判断できないのであれば、北海道に行った議員たちには、政治家としての資格はあるまい。議会の視察を知ったある筑紫野市民は、次のように話している。
 「北海道?冗談でしょう。市民だけでなく、ボランティアの方々までが豪雨被害の復旧作業に全力をあげている。そんななかで、市民の代表であるはずの市会議員が、札幌の商店街の視察なんてふざけてる。キャンセル料なんて関係ない。市民の安心・安全より大事なものがあるとは思えない。辞職して市民に詫びるべきだろう。『一気に復旧できるわけではないから北海道に行った』と本気で思っているのなら、議長は税金泥棒だ」
 

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