2024年11月25日( 月 )

【特別寄稿】豊洲市場訴訟で表面化する政商・日建設計の闇(後)

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(協)建築構造調査機構 代表理事 仲盛 昭二 氏

 疑問や反対の声がいまだ根強く残る東京中央卸売市場の移転問題。新たに建設された豊洲市場は、建物の設計に関し、市場関係者から機能性の問題が指摘されているだけではなく、既報の通り、水産仲卸売場棟の建築基準法違反への疑問が浮上し、ついには訴訟にまで発展した。東京都・小池都政は、市井の疑問の声に向き合わず、今年10月11日に移転を強行してしまうのか。この建物の設計上の問題を指摘した(協)建築構造調査機構の仲盛昭二代表理事は、建築構造設計の専門家および長年、建築設計業界に携わってきた経験から、この訴訟について以下のように語っている。

市場問題PTという御前会議

 移転反対集会で講演する仲盛氏

 私は、東京都知事、日建設計、JSCAに対して、豊洲市場の設計における建築基準法令違反を指摘し、直接的および間接的に、質問状を送付した。しかし、私への回答はない。同じ質問を行ったマスコミに対して部分的に回答された内容は、東京都もJSCAの森高英夫会長も、法的根拠もなく日建設計を擁護するものであった。

 私は建築設計技術者の1人として、この隠ぺい体質や都民への裏切り行為を許すことができず、是は是、非は非として、声を上げ続けてきた。そして、昨年11月21日、豊洲市場の建築基準法令違反の是正を東京都に求める訴訟を提訴したが、訴状受理の4カ月後、一度も口頭弁論は開かれることなく、「原告は都民ではないので原告適格がない」という理由で、訴えを却下された(原告適格性以外の部分は否定されていない)。

 今回、東京都を提訴した築地市場の仲卸業者は、原告として最も適格であり、私の訴状で裁判所に否定されていない法的な部分を踏襲したうえ、行政裁判を得意とする弁護士2名が研究を尽くして提訴している。

 『政商・日建設計』が東京都から受注した豊洲市場の基本設計・実施設計は、建築基準法令違反であり、有害物質対策が不完全な設計であり、都民の血税12.7億円を無駄にしている。また、市場施設の利用状況をまったく考慮していない設計は、市場関係者の反発を招いている。

 小池都知事の肝煎りで設置された市場問題プロジェクトチーム(以下「PT」)は、結論ありきの御前会議である。設計上の問題点について、PT委員に説明を行った日建設計の常木康弘取締役常務・執行役員は、JSCAの副会長だ。建築構造専門家の代表としてPT委員を務めていた森高英夫JSCA会長と、同じ団体の会長・副会長という間柄なので、森高委員が、日建設計の常木常務を厳しく追及するはずもなく、「通常の建物よりもワンランク上の耐震安全性が確保されていると私は判断した」と、日建設計を擁護する発言がPT議事録に残されている。

 さらに、日建設計が説明用にPTに提出した資料のなかには、柱脚(柱の根元部分)の既製品に関して、虚偽の記載を行い、PT委員を騙したことが判明している。この既製品が日本建築センターの評定を取得していることを理由に、問題がないかのような説明資料としているが、評定とまったく関係ない部分が建築基準法令違反となっており、日建設計は「評定取得」というもっともらしい言葉で、巧妙にPT委員を騙し、『御前会議』という儀式をやり過ごした。

 その後は、PTで反論がなければ承認されたものとして日建設計は主張するのである。PTには、森高委員以外にも、建築専門家が出席していたが、質問が制限されたり、意見を封じ込められていたりしていたことが伝わっており、PTが豊洲移転を結論づけるための儀式に過ぎなかったことを物語る。

 東京都は、豊洲市場の所有者であり、管理者である。「建築基準法令違反の建物を設計された被害者」ともいえる。問題物件を市場関係者に押し付けるのではなく、むしろ、東京都は、違法設計を行った日建設計に対して、損害賠償を請求すべきである。そうでなければ、それは、東京都と日建設計の関係の濃さを証明することになるだろう。

 前述したように、日建設計が関与した建物は全国にあり、不特定多数の市民が利用する建物が多い。国土交通省や全国の自治体は、日建設計が関与したすべての建物について、建築基準法令違反の有無を緊急に調査すべきである。同じ設計思想で設計されていれば、同じ瑕疵が潜んでいると考えられるべきだ。たとえば、食品の異物混入が判明した場合、同じロットの商品をすべて回収していることと同じである。

(了)

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