20日に投開票が行われた第27回参議院選挙の福岡選挙区、参政党新人の中田優子氏の選挙事務所には午後7時40分ごろ約15人の支援者が集まっていた。午後8時過ぎ、一部民放で早くも中田氏の当確が報じられると、事務所内では歓声が上がり拍手が起こった。
事務所は博多区にあり、当社からほど近い場所にあるが、現職陣営の事務所に比べると手狭な印象はあり、テレビカメラや中継用ケーブルが入り口付近まで置かれ、取材に来ているメディア関係者の数は支援者よりも多かった。事務所内の熱気によりエアコンの温度を下げても、暑さを感じたが、それだけ期待や注目が高いことがうかがわれた。
同党関係者から「こちらにどうぞ」と椅子に案内されると、隣には吉川里奈衆議院議員が座っていた。国会で選択的夫婦別姓への反対を展開しており、SNSでの支持も多い。結果を待つ間、吉川議員や親しくしている同党の幹部と話をしたが、誰もが当選を確信しながらも落ち着かず、今か今かとNHKで当確が報じられるのを待ち続けた。
結果を待つ間、参政党の候補者の当選がテレビで報じられるたびに、わっと歓声が上がった。とりわけ注目された東京選挙区のさや氏の当選は支援者にとって喜びであっただろう。同氏は、ジャズシンガーで経済評論家の三橋貴明氏の動画チャンネル「三橋テレビ」で司会を務め、経済政策や就職氷河期問題などを発信している。同氏とほぼ年齢が同じで、知り合いが応援していたこともあり、記者も親近感を覚えていた。
投開票日当日の取材は、これまでも自民党をはじめさまざまな陣営に行ったが、開票を待つ前に何度もスタジオと結んで中継を行ったのは参政党が初めてであった。
NHKと民放各局がそれぞれ中継を行ったが、とくにRKB毎日放送の夕方のニュースなどで広く知られるアナウンサーがマイクをもって中継しており、それだけ同党が注目されているように感じた。

一方、各選挙区の出口調査の結果が放送されると、筑豊などでは、現職の松山氏(自民)や下野氏(公明)の票も多く、NHKは午後9時台・午後10時台で「中田氏 優勢」と報じたものの、なかなか当確が出なかった。
選挙戦において、「日本人ファースト」を掲げた同党には「排外主義」との批判があり、「差別を許さない」などのプラカードをもった人々による抗議活動も行われた。選挙ポスターを棄損される事件も起きたが、福岡において取材したなかで同党の関係者は冷静な対応に努めていた。

参政党は、結党から5年で国会議員が衆参合わせて5人。地方議員は福岡市をはじめ140人を超えている。多くの党員は、さまざまなビジネスを展開する経営者、会社員、主婦など、ごく普通の人々で、天下国家を語る右派、頑迷な保守主義者のイメージはない。
コロナ感染対策への疑問や「失われた30年」の経済低迷などの生活実感から「今の政治を変える」と集まったところに同党の特徴がある。吉川議員もそうだが、30代・40代の女性が多く参加している。
中田氏も不動産会社に勤務する会社員であり「普段は高校生の息子のお弁当をつくるのが日課」という。同党躍進のエネルギーは子育てや買い物など日常生活を営む女性のパワーによるものが大きいことは間違いない。
午後11時すぎ、NHKが中田氏の当選確実を報じると、大きな歓声と拍手が起き、各社のカメラが次々と喜び合う支援者を撮影した。涙を流して喜んでいる支援者もおり、中田氏の当選を目指して支援者一丸となって取り組んできたことを感じた。
しばらくして、新開裕司福岡市議とともに、中田氏が姿を見せ、吉川議員から中田氏に花束が贈られ、万歳三唱を行った。

この後、中継や収録での取材が行われ、日付が変わった午前0時半ごろまで歓喜と興奮が冷めやらなかった。同党の今村里香九州ブロック長は「大変嬉しい結果です」と述べ、「これからの責任の重さを実感しています」と語った。
福岡選挙区での自民・立憲・公明3党による「指定席」に初めて風穴を開けた参政党の今後の展開に注目が集まる。
開票翌日、中田優子氏インタビュー
20日に投開票が行われた参院選福岡選挙区は、13人の候補者が立候補する激戦となり、「日本人ファースト」を掲げる参政党に対する賛否が巻き起こった。当選翌21日、中田氏に国会議員として訴えたい政策などについて話をうかがった。

──このたびは当選おめでとうございます。当選から一夜明けての実感は。
中田優子氏(以下、中田) 出口調査では報告をいただいていましたが、最後の最後までわからず、NHKの当確報道が出るまでは、本当に優勢の状況なのか理解するのが大変でした。
──今回の勝因はポスターにもある「日本人ファースト」というスローガンのように思います。一方で「差別」「排外主義」との批判や抗議活動もありました。
中田 (グローバル)大企業を優遇したような政治が行われていますので、まずこの国は日本や日本人を最優先して、経済成長を行うことをこれからも訴えていこうと思います。賛否両論あり、排外主義との批判も受けましたが、日本人だけとはお伝えしていませんし、日本人オンリーとも申し上げておりません。日本国民の方を向いていないので、その順番を改めていこうということをお伝えしました。差別を行うことや肯定するものではないことをご理解いただけるようお伝えしてまいりたいと思います。
──立候補にあたり、ご家族、息子さんは高校生とのことですが、多感な年ごろだと思います。立候補され当選したことについて、息子さんはどう受け止めていらっしゃいますでしょうか。
中田 意外と息子は「さらっと」といいますか、割り切っていて、純粋に応援したいといわれましたし、「当選してよかったね」といってくれました。この生活が変わるよっていうこれからの現実的な生活の変化を、やっぱり説明していかなければいけないなと思っています。選挙期間中は「外で食べてくるからいいよ」と気遣ってくれました。
──一番実現したい政策は何でしょうか。
中田 国民の皆さんが生活で苦しんでいて、手元に残るお金をどうやったら早急に増やしていけるのか。やはり物価高対策、経済対策が急務で消費税減税を行い、手取りを増やすことを一番に考えております。
【近藤将勝】