ソウルの主要商圏に異変(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)
江北で代表的な大学街の新村・梨大は、空港へのアクセスの良さ、お洒落なカフェ、それにソウル有数のクラブタウンという利点を生かして浮上した弘大入口(ホンデイック)との競争に負け、衰退しつつある。
仁寺洞も中国産の低価格の化粧品を扱うお店が軒を連ねるようになり、伝統文化というアイデンティティを失うことにより、伝統と現代を旨く融合して顧客をひきつけている三清洞(サンチョンドン)に客を奪われつつあり、ギャラリー、伝統工芸店なども三清洞に徐々に移っていっている。
日本でいう、池袋のような街の永登浦(ヨンドンポ)も最近活気付いており、新しい商圏になってきた。11万2千坪のタイムズスクウェアという巨大な商業施設が新しくでき、デパート、スーパー、映画館、ホテルなどを利用する客で賑わっており、幅広い年齢層をひきつけている。
ところが、今まで成長を続けてきたソウルの代表的な商圏に異変が起こっている。中国人観光客からの売上が半分ぐらいを占めていた明洞だが、その中国人観光客が急減したことで、大打撃を受けているのだ。中国政府が韓国政府のサード配備に不満をもち、韓国旅行商品の販売を禁止したことが中国人観光客減少の原因だ。テナントは売上減少で賃貸料の負担に耐え切れなくなり、店をたたむところが続出している。
明洞では最近4,5年間、化粧品ショップとユニクロなどの衣類ブランドショップが密集し、韓国最大の商圏を形成していたが、現在では、すでに店を畳んでいるところや、今後廃業に追い込まれるとみられる店が多数ある。ファッション売り場も似たような状況である。
男性服ブランドである「ZIOZIA(ジオジア)」は賃貸料の負担を減らすため、店舗を路地裏へと移転している。このような流れを受け、明洞の空室率は上昇している。
韓国鑑定院によると、昨年の第一四半期の中型、大型店舗の空室率は5.5%で、前年同期比0.4%上昇しているそうだ。弘大入口も同じような状況になっている。弘大入口はクラブ文化が人気を呼び、若者が多く集まるようになり、大きな商圏が形成された。ところが、この商圏を支えていた20~30代の中国人観光客の足が遠のいたことによって、売上が減少し、店を畳むところが増えている。
このようなトレンドは江南地域にも影響をおよぼし、賃貸料の調整が起きている。韓国鑑定院は、江南地域の中型・大型店舗の平方メートルあたりの賃貸料が77,100ウォンから75,500ウォンへと2.1%減少したことを明らかにした。江南のなかでもとくに新砂駅付近は12.9%も減少し、一番の下落を記録している。
ソウルの主要商圏の異変は一時的な現象なのか、それとも持続するのか、もう少し様子を見守る必要がある。しかし、売上減少に関して言えば中国人観光客の減少だけが要因ではなく、韓国の消費が冷え込み、厳しい時期であるということが間違いなく言えるだろう。
(了)
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