2024年10月08日( 火 )

【経済記者が見た経営者の資質】企業家に必要なのはロマン~中内功氏

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 今回、ダイエー創業者・中内功氏の功績についてまとめる機会を得た。中内氏といえば、ダイエーを創業、価格破壊を起こし敗戦で疲弊した日本人の生活を豊かにした。常に小売業界の先頭に立ち、さまざまな改革を実行するなど日本の流通業界に大きな足跡を残した功労者である。

 中内氏は、福岡の発展にも多大な貢献をはたしている。ライオンズ(西鉄ライオンズ~太平洋クラウンライオンズ~クラウンライターライオンズ)が福岡を離れて消えかかったプロ野球の灯を、「福岡ダイエーホークス」で再び灯し、日本初、世界でも2番目となる開閉式ドームを建設した。高層ホテルのシーホークホテル&リゾート、ショッピングモールを含めたホークスタウンを完成させるなど、巨額の資金を投じたが、当初、開閉式ドーム球場への巨額の投資に対して役員や幹部はリスクの大きさに異を唱えていた。中内氏はそれを押し切り、事業を完遂した。完成したドーム球場は、プロ野球の開催にとどまらず、大型イベントやコンサートの会場として国内はもとより、海外からも注目を集め、今でも地元福岡に莫大な経済効果をもたらしている。

 今回の取材を通して感じたのは、常に生活者を喜ばせようとする思いが、さまざまな事業を推し進める力になっていたということだ。中内氏は、大いなるロマンを掲げ、周りを巻き込む力をもっていた。企業家(起業家)にとって、ロマンを抱くことは未来を創ることと同義ではないか。多くの優秀な人材が、中内氏の人情味のある人柄に惹かれ、ロマンの実現のために共に汗を流し、圧倒的な価値を創った。

 経済のグローバル化が進み、企業経営者には、これまで以上に独自性や独創性が求められる時代になった。プロ野球球団やドーム球場を通して中内氏は、企業家に大いなるロマンを掲げることの大切さを教えてくれているように感じる。

【宇野 秀史】

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