【『北方ジャーナル』記者の被災地ルポ(5)】「ただただ嬉しい」市営地下鉄運行再開
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航空便やJR、路面電車などの運行再開が伝えられた7日午後、札幌市民の足といえる市営地下鉄の復旧はやや遅れをとっていた。3路線(南北線・東西線・東豊線)の運行再開は当初「お昼過ぎ」とアナウンスされており、ターミナル駅の1つである東豊線「環状通東」駅には正午前から利用客の姿が……。
「いつまでも動かなかったら、タクシー使うしかないわ」。脳梗塞のリハビリで東区の病院に通っているという70代の女性は、心ここにあらずの様子で閉まったままのシャッターを見つめる。自宅では水道と電気が停まり、電話も通じない。携帯電話をもっていないため、病院とは連絡がとれないままだ。一緒に運行再開を待っていた人から「公衆電話が無料で使える」と聞いたが、「今から電話しても、着いてから何時間待つことになるか……」。
地震の前々日から近くの内科病院に検査入院していたという女性(70)は、退院したその足で駅を訪れた。3日ぶりに帰る自宅は、約10km離れた豊平区福住。一緒に暮らす長男は出張中で、留守宅がどうなっているのか不安が募る。地震のあった6日未明は、5階建の病院の3階に寝ていた。「電気は夜から点いたけど、食事はインスタントのごはんと缶詰め。テレビは見せてもらえなかったので、非常用電源だったのかも」。
駅出入口の前にある縁石に腰掛けていると、午後0時半ごろ出てきた駅員が「1時までにはなんとか再開を」と説明。聞いた女性は「家までタクシーなんか使ったことないから、待つしかないわ」と腰を据えた。道をはさんで向かいに立つコンビニエンスストアが開いているのを知り、大きな袋に入った菓子パンを調達して周囲の人たちにふるまった。
結果として、東豊線の運行が再開したのは午後2時50分ごろ。ゆっくり開いていく出入口のシャッターを目にして腰を伸ばした女性は、「ただただ嬉しい」と笑顔を残し、改札を抜けて行った。
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