2024年12月27日( 金 )

中学生にもわかる公益財団法人の話(前)

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青沼隆郎の法律講座 第8回

はじめに
 本稿の目的は国民の重大関心事である体操の宮川選手パワハラ問題についての早急に解決しなければならない諸重要問題について一つの結論を提示することである。法律的問題であるため、国民には理解が困難であることを承知で論説するしかない。しかし、これは国民が乗り越えなければならない試練だと思う。従って先に結論を提示し、法律の規定や論理による説明は後回しにする。結論に異議がある人には是非読んでもらいたいと思う。

本稿の結論:主題 第三者委員会の設置は合法か

 正義の打ち出の小槌とばかりに、何かと言えば不祥事の際には第三者委員会が登場する。

 本件では不祥事の当事者から、体操協会の委任した弁護士による第三者委員会の構成には人選において不公正であるとの異義が提示された。この異義自体も「法的手続きに基づくものではない」ため、体操協会が無視することもできる。というか実際には無視する他ない。
 ただ、そのこと自体がすでに第三者委員会の違法性に起因する「ほころび」であるため、指摘を受けた弁護士委員は、ある会社の顧問弁護士を辞任して、当事者の論難を避けた。
 この時点で、国民は、より根本的な問題である、第三者委員会の設置そのものの合法性・正当性を判断しなければならない。

結論:本件における第三者委員会の設置は違法である(理由の概略)

 本件には2つの法的紛争が存在する。一つは登録コーチの資格剥奪処分であり、あとの一つは登録選手への不法行為(パワハラ)の有無である。両者をより、法律的表現にすれば、前者は「理事会の処分は適法か」であり、後者は「理事に違法業務があったか」である。

 以上をさらに法律的に検討する。理事会処分の違法性の争いは2つの法的側面を持つ。一つは被処分者が異義申立を行うことであり、もう一つは、これが極めて重大なことであるが、本件では全く無視されている法律制度上の問題である。つまり、理事会の業務執行は監事による監査が法的に不可欠なことである。つまり、本件処分は監事の監査による合法性のお墨付きが必要である。何故、この監事による合法性のお墨付きが必要かと言えば、このお墨付きこそ、監督官庁による公益財団法人の管理監督の端緒となるものだからである。

 公益財団法人の理事会の業務執行の適法性は最終的に監督官庁の承認・許諾なくして成立しない。これが本来の意味の適法処分となる。
 言い換えれば、理事会の違法業務執行は監督官庁による管理監督権の行使による是正と、これは裁判所の姿勢に左右されるが、一般的法的救済としての司法判断による是正が存在する。

 そこで、第三者委員会という法律の規定にもない紛争解決手段の法的意味を検討すれば、委員の委任からみてもそれは単に、理事会による業務執行の延長・補助・諮問に過ぎない。第三者委員会の結論に「被害」当事者が不服であれば、その本質は理事会処分に不服である以上の意味はない。国民はこの本質をしっかり理解すべきである。本件の場合、本来的に理事会で判断できる程度の適法性問題事例であるから、第三者委員会にその判断を委ねることは業務責任の放棄であり、業務の第三者委任の禁止にも抵触する違法委任である。
 因に、理事会が委任した当然の結果ともいえるが、第三者委員会の審理対象は登録選手にたいする不法行為の有無に限定される、と理事会広報担当者が述べた。これは本件第三者委員会の本質を示すもので、理事会や体操協会に不都合なものは最初から審理の対象としない第三者委員会に公平公正性など最初から存在しない。資格剥奪処分は公的処分であり、本質的には行政処分であり、被処分者の戦略的同意など、そもそも意味がない。処分には

客観的な公正公平性が必要である。

 なお、一般社団財団法には理事の不法行為を直接司法手続きにより争う手段が規定されており、公益財団法人の業務の適法性は監督官庁による管理監督と当事者による直接的な司法救済が法の定める方法であり、第三者委員会による理事会業務の適法性の確保など、それ自体、法律違反の方法である。監督官庁への報告に繋がる監事制度の無視は如何なる意味でも許されない。

 以上の結論に関する、詳細な法律論証を以下に解説する。基本的なことから、公益財団法人法の具体的規定の紹介と解釈を述べる。

 読者は、実際の法規の複雑で難解なことを知ることになる。これが、法治国日本の政治(法による統治)の実態でもある。説明自体が難解に感じられれば、それは、故意に難解に構築された行政法体系に起因するもので、非民主的であることが実感されるであろう。

(つづく)

<プロフィール>
青沼 隆郎(あおぬま・たかお)

福岡県大牟田市出身。東京大学法学士。長年、医療機関で法務責任者を務め、数多くの医療訴訟を経験。医療関連の法務業務を受託する小六研究所の代表を務める。

(中)

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