2024年12月29日( 日 )

中学生にもわかる公益財団法人の話(中)

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青沼隆郎の法律講座 第8回

【本論】序論:公益財団法人とは何か

 公益財団法人という言葉さえ聞いたこともなくこの世を去る人も多いであろう。しかし、現実の日本には網の目の如く、いや蜘蛛の巣のごとく各種の公益財団法人が存在する。似たような公益法人である公益社団法人を含めれば膨大な数の公益法人が存在する。

 一体、この公益法人の正体は何か。公益のため法律によって設立が認められ非営利の公益事業を行う団体(法人)である。金儲け事業を行うのではないため、組織の永続のためには公金の助成・補助が行われる。つまり、公益法人の職員の給料は公金によって確保されている。問題はそのような、倒産や破産の心配がない団体の職員には誰が就職しているのかである。一般の営利私企業には営業ノルマがあり、売り上げがなければ倒産するから、従業員・職員はサービス残業も拒絶できない。それに比べればまるで天国である。

 公益法人は監督官庁の管理監督に服する。つまり、公益法人は公金の支出元の国や都道府県市町村の支配下にあり、当然であるが、退職公務員の天下り先となっている。しかし、この説明では若干の誤解が生じるであろう。公益法人の組織は、役員と事務職員から構成され、団体によっては、役員は原則無報酬という団体も少なからず存在する。ただ、現実の公益事業には複雑な収益事業・経済活動が絡んでおり、役員としては無報酬であっても、関連事業の利権を独占したり支配したりすることで、結局は実質的な「報酬」を取得する例は無数にある。直近のボクシング協会事件(ボクシング協会は単なる社団法人組織である)では、無報酬の理事長が親族企業に公認グローブの一手販売権を認め暴利を独占した例がある。

 公益法人を巡る不祥事が連続して明るみに出たが、公金支出という濡れ手に粟の構造が基本にあるため、透明化された監視体制がない現状、一連の不祥事は氷山の一角に過ぎない。

 透明化された監視体制とは、国民が公益法人制度の仕組み自体を知ることが基本である。本稿はその国民の知的認識レベルを中学生の事理弁別能力水準に置いたものである。

 公益財団法人は法律の規定によって設立される。その法律とは一般社団財団法であり、これに準拠して設立された非営利法人が一定の実績が存在し、その公益性が認められる場合、さらに公益認定法に基づき公益財団法人に昇格する。

 社団法人と財団法人の違いは、社団法人は社員を基本とする人的組織を構築し、その組織が団体の目的である公益事業を行う。事業に必要な財源は適宜社員の支出金(年会費や協賛金の名目―経費―で定期または必要に応じて適時徴収される)で賄う。一方、財団法人は必要な財産を先に出資し、その出資財産によって公益事業を行うから会員からの定期的な会費徴収ということもなく、会員も存在しない。

 しかし、社団法人も財団法人も継続的に公益事業を推進するためには公的資金の投入は不可欠で、それが正式に認定された形のものに「公益」という名称が冠される。
 既に「公益」が冠されない段階でも非営利団体としての税制上の優遇特典があり、事実上の公金の支出がある。事実、ボクシング協会は社団法人のままで、各種の公金支援をうけている。
 納税すべき税金が免除されるということは、同額の公的支援を受けることと経済的効果は同じである。日本相撲協会は膨大な収益事業の相撲興行があり、その巨額の収益が無税であるから、その巨額な収益と同額の助成金を受けているのと同じであることは、もはや多言を要しない。
 ほぼ本質的類似性のある法制度が学校法人制度である。私人の設立した学校法人による教育事業の推進では、私学助成は不可欠の要素である。従って、法人の統制原理はほぼ同一であり、公益社団財団法制の理解は同時に学校法人法制の理解に繋がる。基本規範の名称が学校法人では「寄付行為」と呼ばれ、公益財団法人では「定款」と呼ばれるが、その趣旨は私的自治を認めつつも、公的資金投入及び課税優遇に伴う公的管理監督権の法的存在を確保するもので、その管理監督原理も概念もほぼ同一である。
 公益事業といっても多数の経費の出費や費消・投資を伴う経済活動を行うから、実際には様々な利権構造が付随する。公益法人の不祥事はすべてこの本質に起因する。

(つづく)

<プロフィール>
青沼 隆郎(あおぬま・たかお)

福岡県大牟田市出身。東京大学法学士。長年、医療機関で法務責任者を務め、数多くの医療訴訟を経験。医療関連の法務業務を受託する小六研究所の代表を務める。

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