2024年11月05日( 火 )

「新聞離れ」と「朝日離れ」二重の苦悩に明るい見通しはなく(前)

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(株)朝日新聞社

 朝日新聞社の分析をする場合、ほかの新聞社とは異なる視点で分析する必要がある。業績推移を見れば、凋落傾向にあるのは明らかだが、他社と同様に「新聞離れ」「活字離れ」などのオールドメディア衰退という側面だけで見ることはできない。他社にはない「朝日離れ」という現象があるからだ。「朝日離れ」はメディア事業の再構築では解決できない感情論が背景にあり、そこが問題の根深さでもある。

他社よりも大きい落ち込み

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 まず、朝日新聞社の業績推移を見てみよう。朝日新聞社グループとしての連結売上高は、2009年3月期には5,300億円台だったが18年3月期では4,000億円を割り込み3,894億円にまで低下した。10年間で▲27%である。日本新聞協会発表による新聞社総売上高推移によれば、07年度の2兆2,490億円(97社合計)が16年度には1兆7,675億円(92社合計)にまで減少しており、こちらは10年間で▲21%だ。これだけでも朝日新聞社グループの落ち込みが、新聞社平均よりも大きいことがわかるが、対象社数が97社から92社に減ったことを考慮すれば、そのギャップはさらに大きいものとなる。現在の対象社92社だけの10年前の売上高は97社合計より当然少なくなるため、92社の落ち込みは▲21%から縮小することになる。つまり朝日新聞社グループの売上高の落ち込みは、他社よりもかなり大きい。朝日新聞社単独で見た場合はどうだろうか。ほかの新聞社と比較するなら、こちらのほうがより正確かもしれない。朝日新聞社の売上高は09年3月期の3,442億円が、18年3月期では2,552億円となった。▲25%である。グループの▲27%よりは縮小するが、いずれにしても新聞業界のなかで落ち込みが大きい新聞社であることは明らかだ。

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 かつては800万部を安定的に発行していた時代もあったが、最近では600万部すら割り込んでいる。ABC調査によれば、足元の今年7月では584万部だという。さらに、これには販売店に眠る、いわゆる「押し紙」や「残紙」が含まれているため、実質的には400万部台とも言われている。ここ十数年で販売部数、広告収入などが半減したのが朝日新聞社の実情だろう。ネットの台頭や活字離れ、記者の質的低下による読者離れなどが、新聞業界の縮小を招いている。さらに業界の落ち込みを上回る同社の落ち込み幅が、「朝日離れ」を原因とする減少幅といえるかもしれない。

 同グループは09年、10年と大幅な赤字を出し、希望退職者の募集などリストラ策をとった。本来受け取れる通常の退職金に、年収の半分に相当する金額の10年分を割り増すという破格の条件だった。合計額が1億円を超えるとあって、経営陣の予想を上回る68人が応募した。その後も賞与削減や基本給カットなどの施策を取ってきたが、それらはいずれも後ろ向きのリストラ策にほかならず、ダウンサイジングの計画でしかなかった。抜本的な事業の再構築ができないまま、縮小均衡へ走るさまは、斜陽産業となり時代の波に飲み込まれていった、かつての大企業と何ら変わりないものだ。

(つづく)
【緒方 克美】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:渡辺 雅隆
所在地:東京都中央区築地5-3-2
設 立:1879年1月
資本金:6億5,000万円
売上高:(18/3連結)3,894億8,900万円
 

(中)

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