アジア、世界を襲う水と食糧の危機~今こそ日本の出番!(4)
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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏
国連が明らかにした調査報告によれば、世界人口の3分の1以上が水不足に直面しているという。2020年までに我々の使う水の使用量は現在より40%以上も増大すると言われている。そして2025年までには世界人口の3分の2は、必要な水が十分利用できない「ウォーターストレス状況」に陥っていると予測される。
中でも状況が厳しいと見られているのが中国である。急速な経済発展を達成する過程で、大量の水を利用する必要に迫られる中国は自然の循環を遙かに上回るペースで農業や工業に水を利用してきた。また、環境対策を十分に施さなかったため、水源地が次々と汚染されるか、あるいは枯渇するという状況に追い込まれている。
すべての技術にはプラスとマイナスの両面が存在する。日本には純粋な技術神話が根付いているが、技術の進化とともにそれを利用する1人ひとりの消費者の心も進化しなければ、結果的には技術に飲み込まれることもあり得る。
日本の淡水化技術は、中東諸国で幅広く利用されている。石油はうなるほどあるが、水のない国が多いためである。海水を淡水化する技術は豊かな資源をもつ中東産油国にとっては欠かせない技術である。中東にとどまらず、オーストラリアやスペイン、中国、インド、そしてアメリカといった国々でも近年海水の淡水化プラントが相次いで建設され稼働し始めている。その多くは日本の技術を組み込んだプラントである。
世界野生生物基金(WWF)によれば現在世界には一万カ所以上の海水の淡水化プラントが稼働している。今後もその増加の勢いはとどまるところがなさそうだ。もちろん最大の淡水化プラント密集地は中東産油国である。これらの地域では水需要の60%以上をこうした日本の技術を応用した造水プラントで賄っている。
しかし、WWFの専門家に言わせれば「こうした淡水化プラントは海洋生物の多様性に対し危機的状況をもたらしている」と警告を発している。海水から塩分を抜きとる際にさまざまな化学処理を行う淡水化プラント。そこから発生する廃棄物が海洋汚染を引き起こし、海洋生物に対し悪影響をもたらしているという指摘である。いわゆるエコシステムが破壊されつつあるというわけだ。
海水の淡水化や工場排水のリサイクルなど、さまざまな水の浄化技術が世界の水問題の解決にとって切り札と見なされているが、そうしたプロセスのなかで新たな環境破壊の問題の種が生まれていることに対しても眼をつむっている訳にはいかないだろう。世界的に人口の大都市集中が進む中、大規模災害や未曾有の水不足に飲み込まれるリスクは高まる一方である。結局のところ、我々1人ひとりが水を利用する際の賢明な使い方に工夫をこらすしか、この問題の究極の解決策はないだろう。「水一滴一滴が命のしずく」という思いを育みたい。
(了)
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。16年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見~「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。関連キーワード
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