2024年11月24日( 日 )

2030年の世界 アルビン・トフラーの『未来の衝撃』から読み解く(3)

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変化こそ、中心テーマ

 なかでも1970年に発表された『未来の衝撃』は彼らの名前を世界に知らしめるうえで最も大きな影響をもたらした作品だ。オリジナルのタイトルである「フューチャー・ショック」という言葉はたちまち世界的な用語となった。異文化との出会いがもたらす「カルチャー・ショック」という言葉はその以前からあったが、未来との出会いを想像させる「フューチャー・ショック」という造語は多くの読者の心を一瞬にしてわしづかみにした。

 今では「個人、集団あるいは社会全体が変化の波にのまれた時に経験する方向感覚の喪失、混乱、意思決定機能の停止」を定義する用語として広く定着している。『未来の衝撃』についで、トフラー氏は『第三の波』と『パワーシフト』を相次いで世に問うことに。それぞれ独立した著作だが、3冊が一貫した内容で、トフラー氏の追求する「変化論」の三部作を形成している。

 トフラー氏の言葉を借りれば、「中心テーマは変化」である。すなわち、社会が急激に予想もしなかった新しい姿に変容するときに人々に何が起きるのか。『未来の衝撃』は変化のプロセス、つまり変化が人々や組織にどのような影響を与えるかに焦点をあてたもの。『第三の波』の主題は変化の方向性であり、今日の変化が人々をどこに連れていくかにスポットをあてている。また、『パワーシフト』では、今後起こり得る変化のコントロールについて、言い換えれば、誰がどうやって変化を形成するかを扱っている。

 トフラー氏の三部作は変化そのものの、実態と、変化がもたらす多くの課題や問題を綿密に分析しているだけでなく、未来への希望に満ちた内容にもなっている。一連の作品群から読み取れる未来へのメッセージとは何か。それは「いかに大きな変化とはいえ、見かけほど混沌として無秩序なものではなく、変化の影には一定のパターンや識別できる力が作用している」ということだった。

 これらのパターンやパワーを理解することによって、変化に怯えることなく戦略的に対応できるようになり、何かが起こるたびに場あたり的な対応をしなくてもよくなる。そんな自信を読者に与えているのが、彼らの著作の魅力でもあった。単に未来で待ち構える変化の渦を恐れさせるようなキワモノではない。

(つづく)

<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)

前参議院議員。国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。

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