韓国株式市場で台風の目であるバイオシミラーの強者「セルトリオン」(後)
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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏
財閥企業が中心の韓国経済で、ベンチャー企業が、それも短期間に、このような成果を上げたのは奇跡に近いことである。セルトリオンの初めての製品は、自己免疫疾患治療剤であるレミケードのバイオ後続品であるインフリキシマブである。この製品は現在ヨーロッパ、米国、豪州などで販売されている。
ヨーロッパではファイザー、ムンディファーマなど複数の製薬会社がこれを販売しているが、今年の上半期のファイザーの販売額は、前年同期比で32%増加した1億5500ドルとなっている。今年の上半期のヨーロッパ、米国、豪州の販売額の合計は3億3,000万ドルに上るという。昨年より販売額が76%増えたことになる。
セルトリオンは米国より先にヨーロッパで販売を開始し、その後、米国の市場に入った。米国ではファイザーが2016年12月から単独で販売をしている。ファイザーの発表によると、今年の上半期の販売額は1億1,800万ドルで、前年同期対比で3倍も販売額が伸長している。初年度の販売額は、たった400万ドルだったので、米国市場でも販売がいかに伸びているのかが、よくわかる。
セルトリオンはインフリキシマブ以外にも血液がんの治療剤であるリツキシマブのバイオシミラーと、抗がん剤のハーセプチンのバイオシミラーの米国の販売許可をもっている。販売許可がおりれば、米国での販売額はさらに拡大すると予想される。
セルトリオンの昨年の売上高は8,000億ウォンを上回り、営業利益は5,174億ウォンを計上した。セルトリオンは今後も成長を続けるのか、それともライバルのサムスンに追い越されるのか、業界では注目が集まっている。セルトリオンの好成績は株価にも反映されている。
2017年8月頃には株価は10万ウォン前後だったが、今年3月には最高値を記録し、39万2,000ウォンとなった。今は少し下落して30万ウォンほどになっている。ところが、ゴールドマンサックスがセルトリオンの株価は適正価格より高くなっていると発表した。その理由は、ヨーロッパ市場で収めたような成功は米国市場では難しいということと、インドや中国などがバイオシミラー市場に進出し、競争が激化し、利益率が減少することを要因として挙げている。また52億ドルに上る在庫も今後、業績の伸びの足を引っ張ることになるだろうと指摘した。
韓国でもセルトリオンに対する評価は分かれている。セルトリオンは、このような将来に対する不安を払拭するため、潤沢な資金を活用して、第3工場を増設することで、価格競争力を確保しようとしている。それに加えて、バイオシミラー以外の新薬開発も進めており、パイプラインを増やそうとしている。セルトリオンの成功は、米国市場の動向次第で、ある程度は予想できそうだ。
(了)
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