【沖縄県知事選2018】新基地にNO! 沖縄の民意示した「米兵の息子」(米紙)~安倍政権の「終わりの始まり」
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争点は基地問題
翁長雄志沖縄県知事が死去したことに伴う沖縄県知事選挙(9月13日告示)は9月30日に投開票が行われ、「オール沖縄」が推す前自由党衆院議員の玉城デニー氏(58=無所属・新人)が当選、国内で初めて2つのルーツを持つ県知事が誕生した(玉城氏の父親は在沖米軍兵士、母親は伊江島出身の沖縄人)。
選挙戦は玉城氏と自民・公明・維新・希望などが推薦した前宜野湾市長・佐喜真淳氏(54=無所属・新人)の事実上の一騎打ち。「反基地」を全面に押し出す玉城氏と、安倍政権の全面的バックアップのもとで経済振興策を訴える佐喜真候補は、「沖縄vs中央」「反基地vs軍事基地固定化」の構図を背景に激しい選挙戦となっていた。
根拠なき「佐喜真有利」情報
玉城氏は39万6,632票(過去最多)を獲得し、佐喜真氏に約8万票の大差をつけた。女性票の6割、無党派層の7割が玉城氏に投票したほか、自民・公明党支持層の約25%が玉城氏に流れたとみられる。有権者の約4割が最大の争点として基地問題をあげていた。
もっとも、圧勝にも関わらず「玉城氏勝利」を事前に予測できた者は少ない。ベテランの全国紙記者や長年沖縄の選挙を取材し続けてきた地元紙『琉球新報』記者ですら、公示当初は「基礎票は佐喜真が圧倒している。単純な足し算で、玉城は絶対に勝てない」と断言するほど。各種世論調査では玉城氏が先行する状況が続いていたにも関わらず「最後には佐喜真が追い付き、抜き去る」(朝日新聞記者)と見る記者が選挙戦最終盤までいたのはなぜなのか。共同通信に至っては「玉城惨敗」予想までしていたというから不可解だ。
NetIB-News取材班も選挙期間中に現地入りして、両陣営事務所や県民への聞き取りを中心に取材を行った。取材結果と選挙戦取材の「肌感覚」では、明らかに玉城氏が有利。少なくとも負けることはないと確証を得たにも関わらず、大手マスコミ記者たちが口をそろえる「佐喜真有利」の評には実際、自信が揺らいだ。
おそらく大手マスコミの記者たちは官邸主導選挙の徹底ぶりを熟知しているがゆえのバイアス(思いこみ)がかかっていたのではないか。つまり、「政権が本気になれば勝てない選挙などない」ことを思い知らされていたために、無党派層の揺れる心を読み誤り、組織票でさえ絶対ではないことを忘れていた。そういう意味では、今回の選挙が「何かが違った」(選挙取材に定評のあるジャーナリスト)のは間違いない。
「海兵隊員の息子が沖縄県知事に」米紙伝える
今回の選挙の本質は、日本よりもむしろアメリカのほうが正確に把握しているようだ。米紙『The New York Times』は「U.S. Marine’s Son Wins Okinawa Election on Promise to Oppose Military Base」(米海兵隊員の息子が、沖縄の選挙で軍事基地との対決を約束して勝利)と、選挙の「異質」さを伝えている。
県知事選が軍事基地を固定化しようとする中央政界(ヤマトンチュー/日本人)に対する、沖縄(ウチナンチュー/沖縄人)の長い戦いの一場面であったことはこれまでと変わりない。むしろ玉城氏が「イデオロギーではなくアイデンティティーの闘い」と語ったように、今回の選挙は玉城氏自身が戦後沖縄の象徴だった点で、「新時代沖縄」の扉を開くには適任だったともいえる。
国内で唯一地上戦が繰り広げられ、59万人の県民のうち12万人が亡くなり、戦後も70年以上にわたって日米安保条約のひずみを押し付けられ続けている沖縄。玉城氏の、「ダブル」で「父親の顔を知らず」「母子家庭(沖縄県の出現率は全国平均の約2倍)」というバックボーンは、同氏が語る「自立、共生、多様性」の言葉に豊かな説得力を与えていた。
官邸が県知事選で最も恐れていたのが、16日に芸能界を引退した安室奈美恵さん(41)の「玉城氏への応援宣言」だったが、安室さんの祖父も在沖米軍に勤務していた外国人だという。
安倍政権の「終わりの始まり」
自民党がどれだけ結果を矮小化しようとも、今回の沖縄県知事選が単なる地方自治体の首長選挙でなかったことは否定しようのない事実だ。自公に加えて維新の大物議員らが連日沖縄入りして引き締めをはかり、選対を仕切るのは「常勝」を誇る選挙プランナー・三浦博史氏。小泉進次郎自民党筆頭副幹事長の演説会の聴衆をそのまま期日前投票所まで誘導するなど、6月の新潟県知事選の勝利の方程式をそのまま持ち込んで逃げ切りを目論んだ。
選挙期間中、ネット上には玉城氏を誹謗中傷するデマがあふれかえり、陰謀論に冒されて沖縄地元2紙を「中国の手先」と敵対視するネット右翼(ネトウヨ)たちが日の丸を振りかざしながら醜悪な佐喜真応援運動を繰り広げた。さらに沖縄ヘイト記事で『週刊文春』を追われた元記者・竹中明洋氏が自民党沖縄県連に常駐するなど、佐喜真陣営はもはや「勝つためにはなんでもあり」の裏ゴト師集団の様相を呈していたのは、実際これこそが「安倍政権の正体」であるからに他ならない。
安倍首相は玉城氏が当確を決めたことについて「残念だけどしかたがない」とそっけなく語り、菅義偉官房長官は1日午前の記者会見で、米軍普天間基地(同県宜野湾市)を名護市辺野古に移設する方針は変わらないとの認識を示した。要するに、6回にわたって「普天間飛行場移設=新基地建設」を跳ね返してきた沖縄県民の民意など関係なく、沖縄県内に軍事基地を固定化することを決めているのだ。
今回の県知事選敗戦の戦犯として名前の挙がる菅官房長官は、定例記者会見で見せる傲慢な態度で安倍政権の支持率減に大いに貢献してきた。さすがに先を読むことにだけは長けているのか25日の会見では、街頭演説で「(佐喜真氏が勝てば)携帯電話料金を4割削減する」と公言したことについて「沖縄の選挙のことは(候補者)本人に聞いて」といきなりハシゴをはずしている。政府が全力でバックアップしながらも玉城氏の背中がなかなか見えない状況に、選挙戦中盤である程度「負け」が見えていたのだろう。
高まる、小沢一郎待望論
公明党支持母体の創価学会員は「選挙マシーン」と揶揄されながらも大量の「良心の造反組」を出した。さらに「人寄せパンダ」として絶大な人気を誇った小泉進次郎氏は自民党総裁選でもみせたその煮え切れない態度が災いしたのか賞味期限が切れたことを露呈。総裁選での辛勝ぶりからも安倍政権の求心力は急速に低下するとみられている。こだわり続けた憲法改正も、もはや夢のまた夢だ。
一方、野党陣営では「オール沖縄」の取りまとめでも力を発揮した小沢一郎自由党代表の存在感がいやがうえにも増している。来年の参議院選挙や統一地方選はオール沖縄ならぬ「オールリベラル」に近い、中道左派に「真の保守」を加えた「オリーブの木」で自公候補に直接対決を挑む構想がある。実現はまだ不透明だが、沖縄県知事選勝利が剛腕復活の狼煙となる可能性は大きい。
安倍首相の決めたことであればどんなことでも無条件で称賛する「アベ応援団」の経典の1つでもあった『新潮45』が休刊を決めた。潮目が変わるときは、あっという間だという。
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