【社長インタビュー】台風21号で関空連絡橋に激突した「宝運丸」船主~「閉じ込めの原因になった」と謝罪(前)
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9月4日に近畿地方を通過し、大きな被害をもたらした台風21号。大阪府の泉州沖につくられた海上空港・関西国際空港(関空)も、高潮と猛烈な暴風雨の影響で敷地内が水没するなどの被害を受けた。
台風21号の猛烈な風はまさに「想定外」ともいえ、関空と「りんくうタウン」(大阪府泉佐野市)を結ぶ関西国際空港連絡橋には、暴風で流されたタンカー「宝運丸」が衝突。鉄道と道路が不通となり、一時、約8,000人が関空内に閉じ込められる事態となった。
宝運丸を所有する日之出海運の本社は福岡市博多区。取材に応じた同社の清水満雄社長は、「あの日」を振り返って「8,000人もの方々を関空に閉じ込めてしまう原因をつくってしまった。本当に申し訳なかった」と頭を下げる。
日之出海運は1935年創業、現在は宝運丸を含めた船舶を5隻所有している。宝運丸は全長約90m、総トン数2,591tのタンカーで、航空機のジェット燃料を岡山県の水島製油所から関西国際空港まで運んでいた。同社によると、1度に450万リットルのジェット燃料を運ぶことができるという。
――事故当時の映像を見ると、非常に危険な事故だったことがわかります。
清水社長(以下、清水) 事故直後から、運航会社である鶴見サンマリンの緊急対策室で、関係各所との事故後の対応協議や調整をしており、外部とは連絡が取れない状況が続いていました。事故を受け、弊社には連日問い合わせが殺到しています。中には誹謗中傷のようなものが含まれており、事実と違う部分が1人歩きしている部分もありました。ネットやSNS上では従業員や家族を詮索する動きもあり、そうした状況を踏まえ、私自身が事故の詳細や現在の状況、今後のことについてきちんと話をする必要があると考えています。
――宝運丸の錨泊場所(錨を下ろした場所)や事前の対応は適切だったのか。
清水 船のことについては船長が一番熟知していますし、船長の判断は適切だったと思っています。9月3日の夜、関空にジェット燃料を降ろした後、4日には大阪府高石市の製油所へ燃料を積みに行く予定でした。台風の影響で延期になり、高石市の製油所に戻ったとしてもタンクにぶつかるリスクが考えらたため、関空の周辺海域に錨泊することにしました。
関空岸壁から5.5km(約3マイル)以内に錨泊したことが問題として取り上げられていますが、「荒天の場合は5.5km以遠で錨泊すること」はあくまで「推奨」であり、「強制」ではありません。しかも、この「推奨」自体について、当社はおろか船長も関空も運行会社ですら事故当時は承知していなかったことです。我々の業界全体として把握していたかどうかも確認できていません。宝運丸が錨泊していた海域は岸壁から1.6km付近でしたが水深15mと浅く、海底は砂地ではなく粘土質。場所的にも、紀伊山脈、連絡橋、関空の3つに囲まれており、これらが防風防波の役目をはたしていました。過去に海上保安部の船や大型フェリーが錨泊していた場所でもあり、その海域で走錨事故(いかりを下ろしても風に流される事故)は起こっていなかったと聞いています。また、台風に備えてバラスト(底荷、船底に積む重し)に海水を1,260t入れ、満水状態にしていました。台風を想定した、できうる限りの対応をしていたと思っています。
(つづく)
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