2024年11月29日( 金 )

韓国の葬式文化の大きな変化(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 韓国の葬式は悲しみと追悼の念をもって3日間、おごそかに行われる。葬式は故人と最後のお別れを告げる儀式なので、遺族としては、できるだけ最善を尽くし、故人をあの世へ送りたいという気持ちになる。韓国では、弔問に行くと、遺体は病院の安置室に置かれ、弔客は花と故人の写真が置かれている部屋に案内され、弔問をするのが一般的である。韓国でも産業化が急速に進み、昔の葬式習慣はほぼなくなり、葬儀会社が中心になって葬式を進めていく方法が定着している。遺族などが連絡すると、葬儀会社は葬儀日程、手順、方法などをはじめ、葬式に必要な道具の納品や、火葬場の手配など、葬式に必要な一切のサービスを提供してくれる。

 日本の葬式は仏式で行われることが多いが、韓国では主に病院が中心で、キリスト教で行われることが多い。葬式後、故人を埋葬することになるが、韓国では10数年前までは土葬が中心だった。その理由は人体の重要性を強調するという儒教の考えが影響していたからだ。それだけでなく、親から譲り受けた身体を大事にしないと親不孝になるという考え方も根強かった。そのような影響から、親が遺言でも残さない限り、子どもは親の遺体を火葬することに心理的な抵抗感をもっていた。

 ところが近年、韓国の葬式文化に大きな変化が起こり、現在では埋葬方法の8割以上を火葬が占めるようになった。1991年の韓国の火葬比率は約18%で、2001年の火葬比率も30%にすぎなかった。ところが、2005年(52.7%)に初めて火葬が土葬の比率を追い越し、その後も毎年3%ずつ増加している。人口の高齢化、核家族化、土地の不足などが、その原因である。

 韓国の都市のなかで、火葬比率1位は釜山の89.2%、2位は仁川で87.8%、3位は 蔚山(ウルサン)で84.4%、4位はソウルで84.2%である。首都圏の火葬比率がほかの地域に比べて高いことももう1つの特徴である。

 火葬はもともとインドで盛んに行われていたようだ。インドでは釈迦が誕生する前から火葬が伝統的な方法だったようだ。インドは暑く、遺体が腐りやすい。土葬にすると、伝染病などが心配されたため身分の貴賤を問わず、すべて火葬にしたものと思われる。

 インドでは、こうした事情から火葬文化が誕生した。仏教がインドから中国に伝わり、その時、火葬文化も中国に伝わったが、火葬文化自体はそれほど普及しなかった。中国も韓国も儒教と風水の強い影響を受けていたからだ。

 日本、香港、オランダ、イギリスなどは火葬比率が高い国である。一方、台湾、フランス、米国は土葬が好まれている。

 韓国の李朝時代に土葬が奨励されたのは、故人と生きている人たちが会う場が提供されることにより、儒教の中心思想である「孝」が強化されることに狙いがあった。しかし、都市化と産業化が進むにつれ、先祖を敬う精神も薄れ、昔のようにお墓を管理するのが難しくなった。また国土の狭い韓国では、このまま土葬の文化が続けば、費用の問題で段々、墓地の確保も難しくなってくる。

(つづく)

(後)

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