2024年11月29日( 金 )

韓国の葬式文化の大きな変化(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉 明鎬 氏

 親族の絆を強めるはずだった墓地が、親族間の葛藤を引き起こし、お墓の維持に関心をもつ若者も減りつつある。そのような背景があって今、韓国では火葬が急激に進んでいる。筆者は日本にきて火葬というものを知ったが、韓国が火葬中心になるとは夢にも思っていなかった

 火葬が急激に増えたことにより、いろいろな問題が発生している。まず火葬場の不足である。韓国では現在、全国55カ所に火葬場があるが、火葬場を増やすことは簡単なことではない。需要は伸びても、火葬場の設置を地域住民が反対するからである。ソウル追慕公園の場合、建設するまで14年の歳月が必要だった。韓国政府では故人の骨を納骨堂のような施設に納めるのではなく、骨を粉砕して海、森林などにばら撒く「自然葬」を奨励しているが、その割合はまだ20%にも達していない。

 葬式文化が埋葬から火葬に変わっただけではない。葬式には多額の費用がかかる。韓国人は葬式となると、少し無理をする傾向が往々にしてある。故人の最後を少しでも華やかに飾りたいという気持ちや、世間に対する面子などがあるからだ。

 しかし、そこにも変化があらわれてきている。葬式を3日間から2日間へと短縮する方法の登場である。また昔は、故人を見守るといって、夜通し通夜をしていたが、今は遺族の健康面などを配慮し、弔客の訪問は午前0時までとされている。昔は弔問に行き、夜通し花札などをしていたが、そのような光景も見られなくなった。

 もう1つの変化は、90年代に入ってお墓などの管理代行をしてくれるサービスが登場したことだ。お墓は土地代の安い山奥などにあることが多く、現代人にとって、お墓まいりをするのも一苦労だ。そのような世相を反映してか、代行サービスが利用されているのだ。

 昔の人からすると、こんなことはありえないだろうが、先祖への意識にも変化が起こっている。現代人は日常生活に追われており、先祖よりも目の前の現実が大事なのだ。

 韓国の国立墓地では、いまだ故人への差別が存在している。墓地のサイズが大統領は80坪で、将軍は8坪、一般兵士は1坪と差がつけられているのである。故人の墓地の広さに差をつけることに、どのような意味があるのかわからないが、このような制度は、まだ存続している。
人の死は突然なので、いざ葬式を執り行うとなると誰もが慌てる。なぜかというと、葬式に関する情報が、あまりないからだ。それを逆手にとり、実際より高い費用を請求する業者もいるようだ。このような時代環境においては、葬式の簡素化、無駄の削除などが求められているといえよう。

(了)

(前)

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