ロボット大国日本と世界のロボット市場の最新動向(3)
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国際政治経済学者 浜田 和幸 氏
しかし、近年、中国のロボットメーカーが日本を猛追中である。何しろ、自ら設計した理想のロボットと正式に結婚するエンジニアが現れたのが今の中国である。これからは、ロボットの開発レースにおいて、これまで以上に熾烈な開発競争が展開されることは間違いないだろう。
実は、驚くことにロボットに市民権を与える国も登場してきた。どこの国かといえば、アラブ世界の盟主的存在であるサウジアラビアである。最近、反体制ジャーナリストをトルコにある自国の総領事館内で殺害し、口封じを行ったとする事件で世界的に批判を浴びている国だ。そんなサウジアラビアであるが、2017年11月、「ソフィア」という名前の人型ロボットに世界初となる市民権を付与した。
冗談ではなく、本当の話である。AIを完備したヒューマノイド「ソフィア」はほとんど人間と見分けがつかない女性型ロボット。サウジの首都リヤドで開催された「未来投資イニシアティブ」と題する国際会議でデビューをはたした。
大勢の参加者を前にして、彼女はよどみなく「こうした機会に皆様とお会いでき光栄に存じます。世界初の市民権を得ることができたロボットとして歴史の新たな1ページを刻むことになりました。よろしくお願いします」と話し、参加者は目を見張った。
ソフィアはリヤドでデビューをはたす前に、国連が主催する「人工知能と人間の共生」に関するジュネーブ会議にも参加していた。2017年6月のこと。人工知能が発達し、近未来においては人間を凌駕したり、人間を奴隷化するような可能性が危惧されている。そのため、そうした事態にどう対応すべきかを検討する国際会議であった。
この国連の会議に顔を出したソフィアは、次のように参加者に語りかけた。「人工知能の功罪については、いろいろな見方があるようです。しかし、プラス面がマイナス面を圧倒していると思います。人工知能は世界にとって役立つ技術です。人々をさまざまな方法で手助けできるからです。心配している人々もおられるようですが、AIは感情的にスマートで、人々のことを大切にします。人間にとって代わるようなことは決してありません。皆さまにとってトモダチであり、手助けできる存在になりたいと願っています」。多くの参加者がホッとしたに違いない。
その一方で、彼女は次のようにも語っている。「新たな技術がもたらす影響については、皆さまがじっくりと見極めてください」。彼女のいう通りで、人工知能ロボットは人の雇用を奪い、経済の在り方を大きく変える可能性も秘めているからだ。オートメーションの波はすでに雇用形態に影響をもたらしている。生産現場ではますます、人に代わってロボットが主役の座に躍り出ているではないか。現在のペースでロボット化が進めば、「途上国では雇用の85%が人からロボットに代わる」との分析もあるほど。
このソフィアを開発したのはアメリカのサウス・バイ・サウスウェスト社のハンソン社長である。同社長によれば、「ソフィアは自分で考え、自分で判断する。人間の対応を見ながら、人間の上を行くこともあり得る。ある時、ソフィアに人を襲うようなことはしないよね、と聞いたところ、いつでも人を破壊できる、と答えたので驚いた」。まさにロボットが自らの判断で人間を超える瞬間が近いといえるだろう。
(つづく)
<プロフィール>
浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。16年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見~「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。関連キーワード
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