ブルーライトハザードめぐる論争でブルーライト研究会がコメント(後)
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網膜疾患リスクを高める可能性が示唆されている
(一社)日本照明工業会は、「通常ではあり得ない強力なライトを浴びる以外は、ブルーライトハザードは実証されていない」というが、医学会では、体内時計、睡眠への影響、眼精疲労の要因として、ブルーライトを危険視する向きが強い。厚労省は2002年4月に、「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を策定し、職場における作業の在り方への指針を示しているが、ディスプレイ機器が発するブルーライトの人体への影響については、医学的な議論が行われていない。このため、ブルーライト研究会は、「ブルーライトの人体に与える影響を研究し、その結果を広く社会へ情報発信すること」を目的に、12年2月に発足した。
今回の問題で研究会は、「ブルーライトを浴びたり、スマホのブルーライトを見ることで、突然失明したり、突然眼疾患を発病するという報告はないが、光の特性を考えればその影響は慎重に検討していかなければならない。米国医師会が“光公害の時代だ”と警鐘を鳴らしたことは当然で、決して軽んじてはいけない」と指摘。そのうえで、「スマホやPC、あるいはブルーライトを悪者にするのではなく、新しい科学技術に対して正しい知識をもち、健康に配慮したうえで快適に有効に活用することが重要」として、ブルーライトの健康への影響について、考え方を以下の3つに整理している。
(1)ブルーライトの体内時計、睡眠への影響は世界で広く研究されており、臨床レベルでも世界中の多くの医師や専門家の間で合意を得ている。夜間の光との付き合い方や光の性質などを検討する時代にきていると考えている。
(2)ブルーライトの眼表面、および視機能への影響については、いくつかの研究報告があり、眼精疲労の要因になり得ること、ドライアイとの合併でより見え方の質を低下させ眼精疲労を増悪させる可能性があるとの報告から、ブルーライトを軽減する工夫は推奨できると考える。
(3)目の網膜においては、ブルーライトなどのエネルギーの強い可視光の長期的曝露は、基礎研究や動物実験により、細胞死(アポトーシス)や変性 (菲薄化や縮小)を引き起こすことが確認されており、「加齢黄斑変性」や 「網膜色素変性症」などの疾患のリスクを高める可能性が示唆されている。これについてはヒトでの実験はできないため、このデータをもとにどう考え対処するかが問われている。
(了)
【小山 仁】ブルーライトの影響が懸念される加齢黄斑変性は、失明率が世界的にも増加している難治性疾患で、高齢化にともない罹患者も増加の一途をたどっている。研究会では、「加齢黄斑変性の発症原因はまだ確定されていないが、長期間の光暴露もリスク要因の1つと考えられている。長期間、電子機器を使用する際は、ブルーライトを軽減するメガネやフィルターなどを用いることが予防のための選択肢として考えられる」としている。
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