2024年12月23日( 月 )

顕著になったコリア「叩きと無視」 韓国大法院判決後のトレンド(前)

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 韓国大法院(最高裁)の元募集工判決は、1965年以降の日韓関係の枠組みに重大な変更を促した。日本政府の姿勢は、河野外相の強硬発言で明らかである。韓国造船業への政府資金投入をWTO違反として提訴する方針も、対韓政策として注目される。安倍政権、財界の視線は明らかに中国、東南アジア、インドに傾斜しており、朝鮮半島には「叩きと無視」傾向が顕著である。

韓国最高裁判決

 韓国の文在寅政権は、南北国家連合の樹立を目標に動いている。韓国最高裁判決もその方向性に沿った判決と解釈すれば、わかりやすい。この点は「Net I・B News」(11月5日)の拙稿で詳述した。

 韓国最高裁判決を一番喜んでいるのは北朝鮮だ。
 対日国交交渉に臨むスタンスを、韓国内で整備してくれたからだ。文在寅政権は曲がりなりにも1965年体制を守らなければならない。当時の朴正熙政権も日本の植民地支配の不当性を非難したが、植民地支配そのものは合法的だったという壁は突破できず、妥協した。北朝鮮も小泉首相―金正日の平壌宣言で、事実上、協力金(慰謝料)路線に転換していたのである。最高裁判決はもともと北朝鮮の路線そのものなのだ。

青瓦台

 この指摘は、早速、14日になって表面化した。
 北朝鮮の高官5人が訪韓し、戦時労働者の個人請求権問題をめぐって韓国側と共同対処する協議を始めたのだ。韓国与党からは李海瓚(イ・ヘチャン)代表が参加した。京畿道庁の招請によるものだが、青瓦台(韓国大統領官邸)関係者との接触も予想される。韓国側としては南北共闘に拍車を掛け、その成果を基に「植民地支配賠償問題」をクローズアップさせる狙いであることが明白だ。

 朝鮮植民地支配は合法的に締結された併合条約に基づく支配であり、今となれば不当だが、合法的支配だったというのが社会党政権、民主党政権を含む日本政府の一貫した判断だ。植民地支配を非合法とした欧米旧宗主国も存在しない。
 韓国最高裁判決はここにクサビを打ち込んだものであり、南北国家連合の樹立を目標とする文在寅政権のほか、日本国内でも共産党や一部メディアによる「判決理解論」がある。北朝鮮の非核化が、トランプと金正恩の「野合」によって曖昧になる一方で、南北共闘・同支援論が対日対抗軸として浮上している事実を注視する必要がある。

(つづく)

<プロフィール>
下川 正晴(しもかわ・まさはる)

1949年鹿児島県生まれ。毎日新聞ソウル、バンコク支局長、論説委員、韓国外国語大学客員教授、大分県立芸術文化短大教授(マスメディア、現代韓国論)を歴任。現在、著述業(コリア、台湾、近現代日本史、映画など)。最新作は「忘却の引揚げ史〜泉靖一と二日市保養所」(弦書房、2017)。

(後)

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