顕著になったコリア「叩きと無視」 韓国大法院判決後のトレンド(後)
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朝鮮半島と東アジアの情勢〜日中韓トライアングル
青瓦台の報道官は、「北朝鮮の報道官か」と思われんばかりの言動が目立つ。米シンクタンク「戦略国際問題研究所」が、北朝鮮は未申告のミサイル基地を運用しているとの報告書を発表すると、金宜謙(キム・ウィギョム)報道官が13日「北はミサイル廃棄義務条項を入れた、いかなる協定も結んだことがない」と反論した。さすがに韓国与党や保守メディアから批判されたが、文在寅政権の体質をはっきりと露呈した言動だ。
文在寅政権にとって第一義的なのは、南北連合政府の実現である。日韓関係は従属変数であり、テコであり、布石である。日本人はそのことを忘れるべきではない。日韓関係は、ワイドな世界的視角から捉えるべきだ。それが南北共闘の対日攻勢に対処する道でもある。14日からシンガポールに、安倍首相らアジア諸国の首脳が結集した。
日ASEAN首脳会議など一連の会議に出席するためだ。安倍首相とプーチン露大統領の会談も注目された。ペンス米副大統領は会議前に東京に来訪し安倍首相と会談したものの、ソウルには立ち寄らなかった。最近の韓国政府に対する米側の冷えた視線を象徴するような対応を見せた。「ペンス副大統領は韓国パッシング、韓国は米日をパッシング」。こういった外交情勢を伝えた朝鮮日報の記事(14日)は、意味深長である。5日に中国・上海で開幕した「中国国際輸入博覧会」は米中貿易戦争の産物だ。「中国が自由貿易の旗を揚げる」として、習近平主席が提起したのが輸入博覧会だった。日本企業は、目立つ場所に大きなブースを設置し、中国の観覧客を引き込んだ。参加した日本企業は約450社で、2位・韓国の186社を大きく引き離した。この模様を韓国・中央日報は「日本は重視、韓国には無関心…中国のパッシング?」(13日付)と報道した。この日中韓トライアングルの動向も、常に注視すべきだ。
韓国最高裁判決で慰謝料支払いを命じられた新日鐵住金(株)には、重要な動きがあった。10月25日、破産したインドの鉄鋼大手「エッサール スチール」に対する共同買収が、確実になりそうだと発表したのだ。欧州の企業「アルセロール ミッタル」と組んでのインド鉄鋼企業買収は、2030年ごろになれば、“先見の明”が生きてくるだろう。
日本と朝鮮半島の関係を改めて考える
国運の興亡は、経済力、軍事力、文化力の総合である。
戦前の日本は軍事力だけが肥大化し、自滅した。現在の中国は経済力と軍事力が肥大化しつつあるが、文化力(人権重視)が脆弱である。韓国は3つの力とも中堅規模だが、北朝鮮の軍事力(核保有)で補完させる動きを、阻止しなければならない。最近、話題になった防弾少年団(BST)の「原爆Tシャツ」問題は、局部現象であるK-POP市場で起きた問題だが、国民感情をもろに刺激する「原爆」と絡んでいただけに、波紋は大きかった。韓国人の自己中心的な歴史認識が背景にある。重要なのは、依然として、韓国最高裁判決だ。
我々が今回の韓国最高裁判決から学ぶべき教訓は、朝鮮半島は北朝鮮主導で動いている事実だ。理念的(民族ナショナリズム)に、韓国(文在寅政権)は北朝鮮に引きずられている。そのすべては、日本による植民地転落と支配から自ら脱することができなかったという歴史的なトラウマから出ている。北朝鮮にしても、金日成の人生は嘘で塗り固められていることを、今どきの韓国人は知らない。多くの日本人は忘れているが、韓国との条約は北朝鮮には適用されない。
日本は北朝鮮との国交樹立(安倍政権もそれを望んでいる)の際には、莫大な「植民地補償金」を、“またぞろ”要求されるのだ。その金額を釣り上げるために、今回の韓国最高裁判決はとても有用なのである。なぜ、こういったわかりやすい構図を「専門家たち」は指摘しないのだろうか。専門家とは利害関係者の別名である。彼らは国民にとって本当に必要な話をしないのだと弁えておきたい。(了)
<プロフィール>
下川 正晴(しもかわ・まさはる)
1949年鹿児島県生まれ。毎日新聞ソウル、バンコク支局長、論説委員、韓国外国語大学客員教授、大分県立芸術文化短大教授(マスメディア、現代韓国論)を歴任。現在、著述業(コリア、台湾、近現代日本史、映画など)。最新作は「忘却の引揚げ史〜泉靖一と二日市保養所」(弦書房、2017)。関連キーワード
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