シリーズ・地球は何処に向かう、日本人はどうなる(6)~別次元に入った「儲け」集積のゼネコン業界(後)
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廃業できるほどの蓄えがある各企業
一昔前は倒産に占める建設業の割合は全体の過半数あった。中小の建設業界の行く末は不安定の極みだった。だから「バブルが弾けたら建設業者の倒産ラッシュになる」という的外れな見通しをする輩がいる。しかし、そういう予測は大間違い。結論からいえば倒産ではなく廃業が続出するという表現が適切である。倒産と廃業の大きな違いは「他人に迷惑をかけるかかけないか」なのだ。
倒産すれば一般債権者に損害を与えて連鎖倒産を発生させる。そして社会不安を惹起する。一方、廃業はすべての債権者に支払いを履行したうえで店を畳むことである。店を畳んだからといって貧乏になるわけではない。資産=不動産を主体にキャッシュをもっているから「孫の代までは飯が食える」見通しがもてる。それだけ、どの企業もこの5年間、ダイナミックに“儲け”に奔走できたのである。
建設業界にとっての黄金の時代=5年間を経るなかで城戸社長は思索を続けて「もう拡大路線を捨てよう」と決断したのだろう。先見の明がある経営者だといえる。一般の経営者は成り行きで廃業の道を選択する。城戸社長は、それを事前に予測しており、ここが凡人とは違う点だ。
ゼネコンの集計をしたことで、ゼネコン業者が5年間でいかに「黄金の時代を謳歌した」かがわかった。
建設業界、全体が潤っている
筆者はかねてより「建設業界の職人たちにそれ相応の稼ぎがないと世の中が落ち着かない」と指摘してきた。表現を変えると「手に技術を有する方々は報われる収入を得るべきだ」となる。この黄金の5年間で、多少は報われる環境が整備されたと評価できる。今後もこの環境が持続することが望まれる。
ある型枠業者は職人を社員とし、寮では各人1人部屋を提供した。「今どき同居する若者はいないよ。1人部屋を確保しないと若い職人たちは集まらない。儲かっている間に業界のレベルアップのための努力を怠るとしっぺ返しをくらい、将来はない」と危機感を漏らす。使命感に燃えた経営者である。
同業のほかの経営者は「こんな恵まれた時期は長く続かない。職人の社員化は必ずネックになる」と批判する。たしかに経験上、この批判は間違っていない。だが職人を社員化するような業界変革に着手しないと人材が集まらなくなるのではないか。目先のことだけを考えていても未来はない。業界全体が潤っている間に大変革を断行すべきだ。
経済データが間違っているのでは?
建設業界全体が潤っていることは周囲を歩けば肌感覚で掴める。従来、「建設業界に金を落とせば社会に金が廻り始めて成長率が高まる」という常識が闊歩していた。肌感覚では日本の経済成長率は2%を超えていると感じるのだが、現実の成長率は1%そこそこ。このギャップの原因は2つ。(1)データ集積・分析が誤りではないのか?(2)建設業界が景気先導役を担うことができなかった、ということだ。原因は複層しているとも指摘できる。
もう1つ懸念材料がある。起業する人たちが目立たないということである。建設業者のランキングを集計しても、新しく成長している銘柄にお目にかかったことがない。その傾向は建設業界全体に通じる。本当にこの面では寂しい限りで懸念を抱いている。
異常な防衛策が金を循環させず
政府は2019年度予算案で公共事業・インフラ補修予算を前年度2割増で組んでおり、一般会計は100兆円を超える。老朽化した重要なインフラを補修するために2018年度から20年度までの3年間で3兆円超を投じる計画である。我々の生活水準を保つためにインフラ整備は不可欠だ。この予算が景気浮揚の後押しになることが大事なのだが――その役割を果たせるかどうかは不明だ。
バブルが弾けて建設業の経営者たちは長期間、地獄と向き合ってきた。「もう二度とあんな苦しみは経験したくない」という恐怖心からお金を貯め込む思考が定着してしまったのだろう。儲けていても無駄遣いはせず、交際費も極力抑え、社員の定期昇給も僅かなのが現状だ。
「金が循環しないので、建設業界は景気の牽引車の役割を担えなくなった」悲しいかな、これが低成長・日本の真の姿だ。
(了)
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