シリーズ・地球は何処に向かう、日本人はどうなる(9)~貴方の老後は貧か富か(4)
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現世の天国でも退屈になる
水城(仮名)は80歳、社長を辞めて10年になる。会社の経営は息子に託している。「よく切り盛りしてくれて本当に感謝している。破格な額の会長手当をくれるから夫婦で楽しんで暮らせる」と謙遜し、感謝の言葉を述べるが、謙遜する必要などない。サラリーマンをやめて起業し、立派な会社を築き上げたご褒美である。年金に頼らず、自分が稼いだ金で人生をエンジョイして何が悪いか!!
この夫婦は月に1、2回海外、国内旅行に行っている。正月はおそらく台湾で過ごすのではないか。なぜなら台湾には水城の友人がたくさんいるし、台湾料理が大好きだからだ。第3者としては「そろそろこの暮しに飽きてくるのではないか」と思っているのだが、そんな様子もない。「来月イタリアへ行ってくる!!」と水城は言う。85歳ぐらいまで、この暮らしは変わらないだろう。
太田(仮名)は「身の振り方=経営」から引退する決断が早すぎた。65歳で引退し、以降は毎日天国のような暮らしになった。太田は福岡で事業に成功した元経営者の夫婦たちとの食事会に数多く参加する。世界一周の船旅も2回行ってみた。太田は「1年300日、船上で生活している桁違いの金持ちとも知り合った」と打ち明ける。世界一周旅行や高価な料理に舌鼓をうつなど、太田はさまざまなことに挑戦している。
しかし、こうした天国のような暮らしにも飽き始めた。食事会で知り合った夫人から付き合いに誘われるのも面倒になってきた。太田の妻も「私たちの世界に厚かましく踏み込まれるのが嫌だ」とぼやく。「私たちのペースで老後を過ごしましょう。見栄を張る生活は嫌だわ」と訴える。太田も妻の訴えに全面的に同調する。やめていたゴルフを再開するためにレッスンプロから指導を受け始めているとか。
最近、太田から電話がかかってきた。「あなたが指摘した通り、俺の引退は10年早かった」と反省した様子で語ってくれた。
死ぬまで社会に関わり、社会に貢献する
老後、人生の最終局面で見習おうと思う2人の先輩がいる。中川十郎氏と石井幸孝氏だ。2人の先輩に共通しているのは「生涯、世の役にたちたい」という強固な信念をもっていることである。
12月20日夜、東京倶楽部での忘年会に参加した。東京倶楽部がある場所は、昔の鹿鳴館跡地である。福岡の人たちで、東京倶楽部の格調高さを知る人は稀有であろう。東京倶楽部は会員を通じてしか利用できないからだ。
忘年会は日本ビジネスインテリジェンス協会主催で『27周年記念162回・日本ビジネスインテリジェンス協会情報研究年末懇談会』と銘打っている。同協会は2カ月に1度、勉強会を行っている。162回を年6回の開催で割ると27年になる計算だ。同協会が誇るべきは一度も休会が無かったことだ。驚異的なことである。この会の主唱者は中川十郎氏(鹿児島県鹿屋市出身)だ。中川氏は1935年生まれの83歳で。東京外国語大学ではイタリア語を専攻した。
得意の語学を生かして商社のニチメンに就職、その後、大学で教壇に立つ道を選択した。愛知学院大学、東京経済大学教授を歴任して2006年に退任。教授時代から多方面との交流を図り、強固なネットワークを形成して日本ビジネスインテリジェンス協会を設立した。
忘年会参加者の顔ぶれが凄い。元国連大使、元スイス大使、特許ビジネスの第一人者・ドクター中松、大学教授などの面々が参加している。ドクター中松氏は、「いやー、中川氏から頼まれたら断れない」と言う。ドクター中松氏の言葉からもわかるように、中川氏は非常に義理堅く、邪心がない交際をするから誰もが中川氏を信頼しているのだろう。忘年会の運営でも自らが先頭に立ち、来客者を喜ばせている。
日本ビジネスインテリジェンス協会の勉強会にも各方面の識者が毎回、80名は出席している。また、数多くの研究会を立ち上げており、世界学会参加のために年10回は海外へ飛んでいる。中川氏は「死ぬまで日本、世界の為に貢献できるためのネットワーク構築に奔走したい」と語る。
もう1人の尊敬する先輩、石井幸孝氏はJR九州の初代社長である。石井氏は1932年生まれの86歳。東京大学工学部を卒業しており、頭脳明晰なのはいうまでもないが、それが86歳になっても変わらないのは驚嘆に値する。まずは言葉に詰まらない。誰を見ても名前がスムーズにでてくる。いかに東大卒といえども、86歳で石井氏ほど頭脳明晰で、頭脳がフル回転している人は、そういないであろう。
JR九州会長・唐池恒二氏は著書で石井氏を「現在のJR九州の事業基盤を築き上げた功労者」と述べている。この石井氏が主宰する「福岡城市民の会」恒例の忘年会が12月19日にあった。城主は石井氏である。参加者は60名に達していた。一部、政治家もいたが、それぞれの道を極めた方々である。参加者に喜んでもらうためのホスト役を石井氏自ら率先して行っている姿が印象的だった。
(了)
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