2024年11月14日( 木 )

シリーズ・地球は何処に向かう、日本人はどうなる(10)~事業魂が消え、起業する者が減る

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日本人の起業魂は消滅したのか!!

 年末、新聞の特集に多くの若い人が海外で事業を起こしているというレポートが掲載されていた。確かに日本にこだわる必要はない。日本人としてではなく、世界人として己が勝負できるところで事業を起こせばよいのである。ただ残念なのは、やる気がある若者たちが日本を見捨てている点である。

 逆に国内では外国人が起業するケースが多い。福岡でも外国人、とくに中国人起業家の姿が目立つ。彼らの独立心の旺盛さには感服する。

 現代の日本人は文句をいうばかりで、自身の責任を転嫁している者が実に多い。こういったタイプの人間は歳をとるごとに就職できるチャンスがなくなるということに気づいていないのか!!独立心が旺盛だった建設業・不動産業でも企業数が減っているようである。時代が日本人を軟弱にしているようだ。

 ステップアップのためのセミナーが12月5日、東京に続き、翌6日に福岡で開催された。東京は4,000人、福岡は学生中心に400人が集まった。若い時代には誰もが「己の城=起業する精神」を抱く習性をもっているのだろうか!!学生時代からセミナーを受講すれば誰もが起業を志すことはないにしても、多少は閉塞した日本社会を打破してくれるプラス材料になることだろう。

身内の事業者たちが会社売却

 起業する者たちが減る一方、会社を売却する者が増加している。昨年1年で筆者の友人4人が会社を売った。それだけM&Aコンサルが大繁盛しているということだ。M&A会社は代表の年齢から判断して案内状を送付してくるようだ。弊社にも送ってくることがある。

 手の込んだ例もある。設備業者に送りつけられたM&A会社からの案内状を読んで思わず唸った。これなら「ちょっと話を聞いてみよう」という気にもなるだろう。

 「私は設備会社に絞ってM&Aコンサルを行っている平木(仮名、以降の登場人物も同様)です。先だって東京において上場会社さんに規模20億円の設備業者さんを買い取っていただきました。この5年間で20件の実績があります。ぜひ、一度面談させていただけないでしょうか」という趣旨の文言が並べてあった。これならば会ってみようという誘惑にかられても仕方がないだろう。上記4社のM&Aにもコンサルが絡んでいたのだ。M&Aコンサルビジネス大繁盛である。

 田坂の場合、奥さんを亡くしていた。腰を悪くしていたので弱気になっていたようだ。退院した際、激励しに会社に行った。口では「事業続行」と強気で語っていたが、「社員たちのなかに社長になる人材がいない」と嘆いていた。私は「あれ、自前理論(社員のなかから事業継承者を探す)とは違うな」という疑念を抱いた。結果として、その時点でM&Aの話が進行していたのである。

 銀行マン時代の田坂の正義感にあふれた元気な姿を思い出すと懐かしい。「潰しても笑われるから手堅い経営という消極的な規模の会社に終わってしまった。これが非常に残念である」と後悔をしている。今後、何をするのだろうか。老後生活をエンジョイするかは不明である。

 日田は常に2番手の存在だった。これまで懸命に尽くし、尊敬してきた経営者が突然、会社を手放した。日田は「裏切られた」と内心で憤った。この体験が今回のM&Aの原点にある。もともと、トップに立つだけの度量はない。その弱点をカバーするために様々な策を講じ、己の会社をもつことができた。日田は会社の事業を拡大し続け、ピークになった時点で売却。日田は株を100%掌握していた。「裏切られた」経験からの教訓である。

 残り2件は前向きである。佃は別の事業へ転進するための事業資金を入手するために会社を売却。今年4月から新事業を始める。佃には息子が2人いるが、それぞれの道を進んでいるので事業を継承させるのを断念した。

 三池には子どもがいない。いったんは甥に会社を譲ろうとしたが、早い段階で無理だと判断し、上場会社に売った。残りの人生は地方から政治家を育成して「地方活性化」に貢献するという意欲を燃やしている。

 佃・三池の両名はリスクを背負い、事業を起こした非凡な人物である。単に老後をエンジョイするだけにはとどまらない。一方、前者の2人には何か物足りなさを感じる。M&Aコンサルが繁盛するのも良いし、経営者たちが会社売却で功労金を得るのも結構なことだが、今後、企業数が減り続けていくと日本はどうなってしまうのだろうか――。

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