九州全体の連携を図り、持続的な発展を支援(2)
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九州経済産業局 局長 塩田 康一 氏
人材をどうやって地域に残すかが課題
―九州は福岡県を中心に北部地区の勢いを感じますが、一方で南部や西部ではもう少しカンフル剤となるような産業が必要ではないでしょうか。
塩田 県別に見ると、交通アクセスの問題などもあり、一部にそういう地域も見られます。たとえば、長崎県は人口減少率が九州で最も大きいですが、観光関連の産業は伸びていますし、航空宇宙関連企業が進出するなど新たな分野の企業進出の動きもあります。人口流出が大きいということは、そこに産業があれば、人材を確保しやすいというメリットもあると企業側は捉えたようです。私自身、九州各地を回ると、多くの企業が人手不足という問題を抱えていることを実感します。人材がいたらもっと仕事を受注できるという話もよく聞きますので、人を確保しやすいというのは企業を誘致するうえでは非常に有利になるところがあると思います。そういう意味で、いろいろな人材をどうやって地域に残すかということが地域の一番の課題でもあります。
宮崎県も進学や就職で若者が流出しています。宮崎県にも長崎県と同じように航空宇宙産業関連企業が進出しました。このような場合、進出企業単体ですべて完結するのではなく、周辺地域でサポートしてもらう企業との関係をつくっていこうという動きが出てきますので、連携できる企業の掘り起こしに力を入れれば地域への波及効果も大きいと期待しています。
航空宇宙というと、認証などで提出する多くの書類にハードルが高いと受け取る方が多いかもしれませんが、地元企業の積極的な取り組みを支援してまいります。宮崎県だけでなく鹿児島県にも連携しようという企業が出てきています。九州全体においては、ものづくりの発展という意味でも、こうした新しい動きが出てくればいいと思っています。
円滑な企業立地の支援
―「元気都市」と呼ばれた国分(現在の鹿児島県霧島市)の「国分隼人テクノポリス」のような所が何カ所かできてくると変わるのではないかと思います。
塩田 国分はテクノポリス政策以来、多くのものづくり企業が立地し、企業が集積しています。薩摩川内市も半導体関連企業の増設の動きがあります。また、地元の地域資源である竹を生かしたセルロースナノファイバー(CNF)という新素材を使って、新たな産業を興す事業を推進しています。
景気回復の影響で、工業団地など既存の団地内の土地が足りなくなり、今は新しいところを確保するのが難しい状況になっています。福岡市の近郊でも新しい団地をつくろうという話も聞きます。
昔は中核工業団地などの土地が余って、塩漬けになっているものもありましたが、今はだいぶ減っており、地域未来投資促進法の農地転用の特例の活用など円滑な企業立地を支援してまいります。
―海外に出た企業が日本に戻り、製造拠点をつくろうとする動きは九州にはありますか。
塩田 全体的に日本に回帰するという話も聞きますし、実際にあるかもしれませんが、具体的なところはまだ把握しているわけではありません。
―冒頭おっしゃられたように宮田(福岡県宮若市)、苅田(福岡県苅田町)はこの20年間に日産自動車やトヨタ自動車が進出したことで、日本における工場の拠点の1つになっています。しかし、先ほどの話のようにEV化によって仕様などが変わってくると、今後、変化が求められるようになります。新しくつくるだけではなくて、既存の戦略的拠点がイノベーションの流れについていけるかという問題についても、経済産業局として指導していく課題でもあると思います。
塩田 EVの生産拠点をどうするかという点は、各自動車メーカーが一義的には判断すべきことだと思いますが、トヨタ九州も昨年10月ごろにEV生産についての調査などを行う組織を立ち上げて、活動を始めるという新聞報道もあり、引き続き、九州での生産を続けていくという方向だと思います。
九州の自動車産業を見ると、エンジンなどの製造よりは、それ以外の内装品や組立工程などが多くを占めていますから、エンジンがモーターに替わったからすぐに需要がなくなるということではないと考えています。
―まだ時間はありますし、変化に対応していけばいいということですね。
塩田 EV化に対応できるような技術開発や生産方式など、いろいろ課題はあると思います。本省の方でも2019年度から「サプライヤー応援隊事業」で専門家を派遣したりする制度も創設したところです。九州経済産業局でも、技術開発に対する既存の支援措置も活用して引き続き支援していきます。そういうなかで、引き続き九州において自動車産業が1つの拠点となっていくような施策は検討していくべきだと考えています。
(つづく)
【文・構成:宇野 秀史】
<プロフィール>
塩田 康一(しおた・こういち)
1965年10月生。鹿児島県出身。東京大学法学部卒業後、88年4月通商産業省入省(大臣官房企画室)。2002年6月外務省在イタリア日本国大使館一等書記官、05年6月商務情報政策局環境リサイクル室長、11年7月製造産業局鉄鋼課長、12年6月中国経済産業局総務企画部長、14年7月内閣官房地域活性化統合事務局参事官、16年6月内閣府本府地方創生推進室次長、17年7月大臣官房審議官(産業保安担当)などを経て18年6月九州経済産業局長に就任。関連記事
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