筑前太郎が斬る!流通業界の深層~売り手と買い手の心理学、モンスターカスタマー幻想
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お客は汗水たらして稼いだ金を使うのだから最高のサービスが当たり前だと思って店を訪れる。その思いのなかに店がある便利さにはなかなか気がつかない。だから、時として過剰なサービスレベルを店に要求する。その求めるものが正しいかどうかの判断と、どの程度それに応えるかは店にとって悩ましい問題だ。
ルール1 お客は正しい
ルール2 もし、お客が間違っていると思ったらルール1に戻れアメリカのあるスーパーマーケットが店の入り口に建てた石板に刻んでいるお客に対する姿勢である。
小売業に従事していると、さまざまなクレームに遭遇する。中には的外れや理不尽なものもあるが、問題はその中身ではない。それがどんなクレームでもお客にとっては、それが事実ということである。
この商品の味はおかしい。そんなクレームは少なくない。そこでいわれるままに試食してみるが何の問題もない。そこで問題のない旨、お客に伝え、解決を図ろうとすれば、それは100%第二次クレームになる。お客は味がおかしいと言っているのである。自分が試食して異常がなくてもお客にとっては異常なのだから、そこで正しいことを言っても解決にならない。
対策は代わりに同じ商品を交換持参することである。たいていの場合はそれで解決する。
それでもお客が納得しない場合は、お客がその商品購入を後悔している場合だ。それが推測されるときは返金で応じればよい。
この2つでも納得してもらえない場合は仕方がないが時間という「誠意の長期戦」に入るしかない。相手が納得するまで説得を続けることだ。たいていの場合は、それで解決する。
ちなみに、先のスーパーの姿勢は年配の婦人客が店で購入した七面鳥をオーブンで焦がし、調理に失敗し、黒こげの七面鳥を店にもち込んだ時のことに由来する。
店の主人はお客の過失を主張したが2人のやり取りを聞いていた店主の奥さんが「そうだよ、おばあちゃん。悪かったのは七面鳥の方だよ。代わりの七面鳥を用意するから」と笑顔でお客に言った。客が帰った後、憤る店主に奥さんが言ったのは「あなた、25ドルの七面鳥であのお客さんが一年間にうちで使ってくれる5,000ドルをなくしちゃうのかい?」
普通、たいていの客は2~3店舗の店を使い分ける。より多くの頻度で自分の店にきてもらうには「お客は正しい」を徹底するしかない。上得意より常得意である。
【筑前 太郎】
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