2024年11月23日( 土 )

人々の日々の生活を陰で支える都市インフラの担い手(後)

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松山建設 (株)

増え続ける老朽管、SPR工法で早期解決を

 建築・土木双方の分野で幅広い実績を有し、福岡を始めとした各地方都市での都市形成・インフラ整備に多大な貢献をしてきた同社だが、今、改めて注力している分野が、老朽化してきている下水道の再生だという。

 下水道は地下にあるため日々の暮らしのなかでは、目につくことはないが、生活環境基盤を支える、なくてはならない必要不可欠なもの。これまで日本では半世紀以上にわたり、社会資本となる下水道の整備に尽力してきた。その結果、現在では下水道普及率は全国で約8割にまで達している。

 しかし、その一方で「整備が開始された当初に敷設された下水道管は、維持管理が十分行き届いていないものも多く、それらが耐用年数の50年を迎えて老朽化しているという現状があります。放置されたままの老朽管は、漏水・侵入水の発生はもとより、管路破損によって引き起こされる道路陥没を始め、排水能力不足による臭気発生や耐震性能の不足など、さまざまな問題を誘発する可能性があり、大変危険です」と、同社代表取締役社長・松山孝義氏は警鐘を鳴らす。しかもそうした老朽管は今後、年々増えていくことが予想されており、今まさに、下水道管のみならず、農業用水管や工業用水管など、多岐にわたる改築・更新が必要とされている。

 こうした老朽化した下水道管路の再生に、多大な効果を発揮するのが、同社が採用する「SPR工法」(スパイラル自動製管管路更生工法)だ。これは、老朽化した下水道管を新管と同等以上の強度に復元するという非常に優れた工法で、ものづくり日本大賞の経済産業大臣賞のほか、産業界のノーベル賞と称される「大河内賞」、さらにはグッドデザイン賞なども受賞している。口径の大小や形状を問わず、あらゆる下水道管に対応でき、道路を掘り起こすことなく、しかも下水を流しながらでも施工可能なことが強みだ。

 「かつて福岡市は、2003年の御笠川の氾濫による博多駅周辺の浸水など、何度も大水害に見舞われたことがあり、その浸水対策が急ピッチで進みました。市にとっての次なる喫緊の課題が老朽水道管の再生で、これも早期に解決していかねばなりません。弊社の施工技術が、少しでもそのお役に立てればと思います」と、松山社長の言葉は力強い。

 なお、こうした普段のインフラ整備だけでなく、自然災害などの発生時に真っ先に復旧のために尽力するのも、同社のような建設業者だ。たとえば同社では18年1月に、強い寒気の影響で九州北部が大雪に見舞われた際にも、国道201号八木山峠で緊急除雪活動を行っている。災害に対する事前の備えと実際に発生した際の対応の両面から、同社のような存在は非常に心強いばかりだ。

学校法人沖学園一号館新築工事

人材教育や新技術など、激変する業界のなかで

 「現在、どの業界でも人材不足という問題がありますが、とくに建設業界においては入職者自体が少ないことに加え、辞めて別の業種に転職される方もいらっしゃると思います。そうしたなかで弊社では、社員1人ひとりに気を配る意識が以前よりも高まってきているように思います。私自身も『一声かける』『一手間かける』ということを意識しながら、社員がお互いに『つながっているな』という思いをもてるように努めています」と松山社長は、人材についての課題を抱える業界内において、自社内の結束を固める方策も講じている。

相馬市磯部地区太陽光発電所建設工事

 また、建設業界における社員教育のあり方についても、変化の波が訪れている。かつて建設業界では、いわゆる徒弟制度のように『見て学ぶ』というやり方が主流だった。それが現在では、技術を伝承・継承させていくことに加え、離職者を防ぐという意味合いでも、若手が習得しやすいように変わりつつあるという。また、「ICT施工のように新たな技術に関しては、ベテランは取っ付きにくいが、若手のほうが入りやすいものも出てきています」(松山社長)というように、施工技術自体の進化による変化もあるようだ。

 最後に、松山社長に求める人材について聞くと、「我々のような建築や土木といった分野は、社会インフラを支えるためにもなくてはならないものです。そこに魅力や喜びを感じ、地に足を着けて活躍したいという方に入ってほしいですね。そして彼らに負けぬよう、我々も一緒に日々成長を続けていきたいと思います」という答えが返ってきた。

 人々の日々の生活を支える社会基盤を構築するために、現状に甘んじることなく、常に上を目指している同社。こうした姿勢こそが、福岡県を代表する総合建設業としての同社の地位をつくり上げているのだろう。

(了)

<COMPANY INFORMATION>
代 表:松山 孝義
所在地:福岡市中央区高砂2-24-23
設 立:1956年9月
資本金:4,000万円
TEL:092-533-0001
URL:http://www.matsuyama-k.co.jp

<プロフィール>
松山 孝義(まつやま・たかよし)

 1962年、福岡県椎田町(現・築上町)生まれ。明治大学法学部を卒業後、コンピューター関連の会社でシステムエンジニアとして活躍。95年に松山建設(株)に入社。2000年に代表取締役社長に就任
 

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