【中華人民共和国・何振良駐福岡総領事に聞く】『中国の視点』で見る貿易摩擦 望まれる「Win-Win-Win」の実現へ(前)
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中華人民共和国 駐福岡総領事 何 振良 氏
九州・山口、沖縄8県を管轄する中華人民共和国駐福岡総領事館。2016年7月に総領事として赴任した何振良氏は、積極的な情報発信と既成概念に囚われない自由な発想に基づく各種交流イベントの企画・実施で福岡での存在感を高めている。日本に身を置き国際交流に取り組む何振良氏にとって、アメリカとの貿易摩擦はどのように映っているのか。日本と中国の交流の現状とともに語っていただいた。
「最大の発展途上国」
―米中摩擦をどのように捉えていますか。
何振良総領事(以下、何) 中国側は、決して貿易摩擦を望んではいませんが、かけられた圧力に何らかの対応をとるのは、どの国でも同じだと思います。ただ、世界1、2位の経済大国同士の貿易摩擦となると世界経済全体に影響をおよぼします。我々としては、それをできる限り避けようとしています。中国はハイスピードで発展してきましたが、同時にグローバル化を図り、世界経済に大きな貢献をしてきました。この5年間、世界経済成長への貢献率は30%前後で推移しています。これは世界中の国が認めた数字です。
中国は、自国の発展を遂げながら同時に「一帯一路」の政策をとり、地域経済を発展させてきました。2013年に習近平国家主席が「一帯一路」のイニシアティブを打ち出してから5年間で100以上の国と地域、国際組織が積極的に参加し、一部のプロジェクトでは結果が出ています。沿線各国の貿易規模はすでに7兆ドルに達しています。
先日、福岡貿易会主催の「一帯一路」セミナーに来られたカザフスタン鉄道の方によると、中国からヨーロッパまでの中間地としてインフラが整備され、貨物輸送関連で雇用が増え、地域経済全体の発展につながったそうです。そのカザフスタンの方が「博多を出発地として、空路・海路で中国にモノを運び、鉄道に積み替えてヨーロッパに運べます。今やらなければ、韓国・釜山に先を越されますよ!」と、九州の経済界の方々に危機感をもつように話していました。
―福岡・博多からのルートとはどのようなものがありますか。
何 海路では、博多から江蘇省・連雲港、太倉港、遼寧省・大連港、天津港へ。そこから中央鉄道に貨物を積み替え、最終着はドイツのデュースブルクまで行きます。空路では重慶まで行き、そこで鉄道に乗り換えます。従来よりも3分の1に時間短縮でき、コストは半分になります。すでに日本通運さんは、日本の電子部品や自動車部品を中国経由でヨーロッパに運んでいます。
―「一帯一路」の狙いとは。
何 中国だけで利用するのではなく、世界各国の皆さまに利用していただき、ともに発展・繁栄していくという『Win-Win-Win』の関係を築くことです。中国とアメリカの「貿易戦争」ともいわれ、中国がアメリカによる世界秩序を変えようとしているという人もいますが、中国は“最も大きな発展途上国”として途上国のための新しい秩序を考えています。どんなものにも良い面・悪い面の両面があります。改善すべきは改善していかないといけません。戦後73年間で世界は変化し、いろいろな問題点も出てきています。
2年前、トランプ政権が誕生し、アメリカがつくった秩序をアメリカ自らが壊そうとしています。その責任を他国に押し付けるのは、世界各国から見てよいことではありません。アメリカの学者は、中国とアメリカによって、国際情勢は「米ソの冷戦時代に戻った」といいます。もう1つの言い方は「敵対的対立関係になりつつある」というものです。昔、中国とアメリカは、相当な実力の差があり、競争関係ではありませんでした。しかし昨年、中国のGDPがアメリカの60%に相当するようになりました。それからアメリカは警戒心をもち、いろいろな措置をとるようになりました。
習近平国家主席は、人類の運命共同体を提唱しています。Win-Winの関係を平等に広めていくことが私たちの目的です。貿易摩擦は、どんなかたちであろうと望んでいません。
(つづく)
【聞き手・文:山下 康太】
<プロフィール>
何 振良(か・しんりょう)
1967年生まれ。96年、中華人民共和国駐日本国大使館三等書記官として着任。以後、外交部アジア局副処長、同局日本遺棄化学兵器問題処理弁公室主任、駐日本国大使館公使参事官を歴任。2016年7月、駐福岡総領事に着任した。関連記事
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