2024年11月30日( 土 )

【中華人民共和国・何振良駐福岡総領事に聞く】『中国の視点』で見る貿易摩擦 望まれる「Win-Win-Win」の実現へ(後)

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中華人民共和国 駐福岡総領事 何 振良 氏

大きな節目を超えて

 ―駐福岡総領事館として、どのような取り組みを行っていますか。

 何 17年に国交正常化45周年、18年に平和友好条約締結40周年と、2年連続で節目の年を迎え、総領事館として、さまざまな交流活動に取り組んできました。17年は、江蘇省物産展および江蘇省と福岡県の友好パネル展、九州中日友好交流大会、管轄内の県知事による中国訪問などのほか、地方都市間の相互交流を盛んに実施しました。

九州中日友好交流大会

 福岡県・小川洋知事は江蘇省、熊本県・蒲島郁夫知事は広西チワン族自治区、亡くなられた沖縄県・翁長雄志知事(当時)は福建省、山口県・村岡嗣政知事は山東省、鹿児島県・三反園訓知事は江蘇省、上海など、8県のうち5県の知事に中国へお越しいただきました。中国からも関係友好都市の政治指導者による訪問が行われており、直近では18年9月、貴州省の孫志剛書記が佐賀県・山口祥義知事を訪問しています。佐賀県と貴州省の交流は20年来になりますが、書記の訪問は初めてであり、これまでの関係をさらに発展するべく中日両国の相互理解の促進など友好交流の合意書を交わしました。

 ―18年は福岡市で大きな交流イベントを開催されましたね。

 何 先ほどの九州中日友好交流大会に加え、18年は平和友好条約締結40周年とともに改革開放40周年でもありました。私たちは10月23日、民間の方を招待し、40年間の改革開放の歩みを振り返りながら、中国と日本の交流を深める会を福岡市で開催し、多数の方にお越しいただきました。中国と日本の友好関係の基礎は民間にあります。国交が正常化する前は、「民で官を促す」と、民間が先行して交流活動を行っていました。

 現実的な問題としては、民間友好団体の高齢化が進んでいます。友好交流の後継者を育てていかなければいけません。私たちは、18年8月の友好交流大会で『青少年交流』をテーマとし、中国から300名ぐらいの子どもたちを招き、音楽、書道、絵画などを通じて福岡や熊本の子どもたちと触れ合ってもらいました。19年は、中国と日本で「中日青少年交流促進年」と位置付けられており、5年間で合わせて3万人、中国と日本、1万5,000人ずつを互いに招聘して交流活動が行われます。

 駐福岡総領事館では、スポーツ面での交流にも取り組んでいきます。実際には、すでに各県でそれぞれスポーツ交流が行われており、それらを集約するようなかたちで大きなイベントにしたいと思っています。

友好交流を身近に

 ―経済面での今後の取り組みについて教えてください。

 何 日本の介護、農業、環境の技術を中国に教えてもらえるように進めていくことも重点項目としています。中国から日本に対する投資は増えています。17年から、海外から中国への投資よりも、中国から海外へ投資する金額のほうが大きくなっています。日本への投資は、まだ十数億ドルぐらいですが、今後さらに増えていくでしょう。もちろん、Win-Winでなければいきませんから、私たちも良い日本のプロジェクトがあれば、いわゆる「懸け橋」として、中国に紹介していこうと思います。

 ―身近なところでも中国文化に触れる機会が増えて欲しいですね。

 何 華人華僑団体の主催により、19年2月の春節(中国の旧正月)にあたり、23日と24日の土日2日間、天神中央公園(福岡市中央区)で春節まつりが開催されます。中国本土の芸術団による伝統演芸が披露され、屋台ではおいしい中華料理が楽しめます。

駐福岡総領事館の一般開放デー

 駐福岡総領事館では、中国食文化体験交流会として「麻婆豆腐をつくる会」を開きました。100名くらいの日本女性の方にお越しいただき、福岡の中華料理店のコックが調理した麻婆豆腐を手本にして実際につくってもらうというものです。

 また、一般の方たちとの交流も重要視しており、年3~4回、総領事館の一般開放を行っております。18年は、西新小学校の子どもたち400名弱、福岡県の職員研修所、「田川飛翔塾」(田川地域の中学2年生を対象としたリーダー育成塾)の学生などが来られました。17年は、総領事館近隣の町内会の方に協力していただき、100名くらいの方が見学に来られました。総領事館から中国をもっと身近に感じていただけるようにして、中日友好の良い雰囲気をつくっていきたいと思います。

 ―新年(19年)の展望・抱負をお聞かせください。

 何 18年は、両国総理の相互訪問という大きな成果がありました。5月に李克強総理が日本へ、10月に安倍首相が中国を訪れました。首脳会談も頻繁に行われており、民間レベル、各分野の交流が密接になっています。19年にはG20大阪サミットがあり、習近平国家主席が参加します。その際、日本への正式訪問となるかが大きなポイントになりますが、このままいけば、実現するのは自然なことだと考えます。総領事館として、それを実現する雰囲気づくりに努めたいと思います。

(了)

【聞き手・文:山下 康太】

<プロフィール>
何 振良(か・しんりょう)

1967年生まれ。96年、中華人民共和国駐日本国大使館三等書記官として着任。以後、外交部アジア局副処長、同局日本遺棄化学兵器問題処理弁公室主任、駐日本国大使館公使参事官を歴任。2016年7月、駐福岡総領事に着任した。

(中)

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