「ラストミッション」北橋市政4期16年へ突入
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今年1月27日に投開票が行われた北九州市長選は、現職の北橋健治氏が、新人2名に15万票以上の大差をつけて圧勝。しかし、多選批判を行ってきた北橋氏が「ラストミッション」として再選を目指すことには疑問の声もあがっており、水面下では自民系の対抗馬が出馬を模索する動きもあった。主要政党の市議会会派の支持を土台として選挙戦での激戦を回避し、市政継続の審判を受けることができた北橋氏だが、その結果、4月の県知事選への対応で難しい判断が求められる。
多選批判かわし再選1月27日投開票の北九州市長選は、無所属の現職で自民、公明、国民民主系の市議会3会派、経済界、連合などが支援した北橋健治氏(65)が19万6,684票を得て、いずれも無所属で新人の、共産党福岡県委員会常任委員・永田浩一氏(53)=共産推薦=と、水産加工会社社長・秋武政道氏(58)を破り、4期目の再選を決めた。北九州市選挙管理委員会によると、投票率は過去最低となる33.48%(前回35.88%)であった。
北橋氏が選挙公約のなかで強く訴えたのは、国やOECDにモデル事業として選定されたSDGs(持続可能な開発目標)の推進と、2020年に年間を通して日中韓の文化交流を担う「東アジア文化都市」事業の成功。当選確実後の記者団の取材では、マスコミの分析や市民の反応をふまえ、「若い人が魅力を感じる経済・産業づくりが文化振興、SDGsの推進につながる」とし、「若い人に寄り添うような政策の訴え方に変えた」と語った。選挙スローガンに掲げた「日本で一番 住みよい街に。」の実現へ向けて4期目に臨む。
今回の選挙戦では、多選を批判する声もあがった。07年の初当選時、マニフェストに多選自粛条例の制定を掲げ、議会答弁で4選以上は出ないとしていた北橋氏は、「選挙において審判を仰いだ」とコメント。多選についても、議会やマスコミの監視が働くなかでは、長期政権による暴走は起きにくいといった見解を述べた。また、選挙中、次の任期が最後と思わせる「ラストミッション(最後の使命)」といった発言を繰り返したが、今後の進退に関する記者からの質問には、各方面への影響を理由に「不言実行」と明言を避けた。
自治体ワーストクラスの人口減少による経済縮小は、地場デパートの閉鎖など目に見えるかたちで現れ始める。一方で、昨年10月に「日本新三大夜景都市」に認定されたほか、移住者の積極的な受け入れや医療・介護の充実が評価され、宝島社が発行する月刊誌「田舎暮らしの本」2月号で発表の「2009年版住みたい田舎ベストランキング-シニア世代が住みたい田舎部門」で2年連続の1位に選ばれるなど、明るい話題にも事欠かない。技術革新も含めて社会の様相が激変するなか、まちづくりのビジョンをどう描いていくのか、北橋市政は4年間の延長戦に突入した。
知事選への対応は?
多選批判をかわし、4期目を迎える北橋氏だが、自身でも述べているように福岡県政との関係性は市政運営で成果を上げるうえで大きなファクターとなる。注目されるのは、4月7日投開票の福岡県知事選への対応だ。1月27日、北橋氏の当選確実を祝す場には、北九州市を選挙区とする国会議員や県議会議員、北九州市議会議員の姿が多数見られた。独自に推薦候補を擁立した共産党を除けば、北橋市政が一枚岩となったとの印象を抱かせる。その一方で、小川洋福岡県知事が姿を見せることはなかった。福岡県内の国政選挙や首長選挙で、当選者のもとに小川氏が知事として駆けつける姿は、いままで何度も見られていた。
小川氏が姿を見せなかったことには、今回の市長選に関連して行われた自民党主催の決起集会が関係しているとの見方もある。その場に姿を見せたのは、知事選で小川氏の対抗馬となる元厚生労働官僚の武内和久氏(47)。武内氏については1月30日、自民党本部が知事選で推薦することを決めた。
武内氏を強く推すのは、北九州に影響力をもつ麻生太郎副総理だ。麻生氏は、北九州市長選で北橋氏の対抗馬擁立を画策。昨年11月の福岡市長選では、支援する高島宗一郎氏の応援演説で、「人の税金を使って学校に行った」などと東大卒の北橋氏を批判し、同じ政令市で人口増を続けている福岡市を引き合いに「北九州は人口も税収も減らしているが、それで再選しようとしている」とこき下ろした。実際に、麻生氏に近い自民党の北九州市議の名前が対抗馬に浮上していたが、北橋氏を支持する自民党市議団・片山尹(おさむ)団長のとりなしが奏功し、この話は沙汰止みに。事実上、自民党も北橋氏を支持するかたちとなった。
こうした経緯から北橋氏の知事選への対応が注目されているが、いくつかの要因から自身の対応を直ちに明言することができないでいる。まず、北橋氏の支持基盤である連合が小川氏支持を決定したこと。その一方で、武田良太衆院議員を始めとする二階派の国会議員、自民党OBの古賀誠氏、山崎拓氏、太田誠一氏らも小川氏支持という自民分裂の状況にあること。そもそも地元経済界の支持が厚い小川氏が圧倒的に優勢という見方がある。
知事選の対応について北橋氏は、「いろいろな方のご助言・ご意見をいただいて判断したい」とお茶を濁す。小川氏側からすると、共闘できる立場にいた北橋氏が敵方の軍門に降ったようにも映る。小川氏は、高島氏が3期目の再選を決めた場にも姿を見せておらず、宿泊税の導入をめぐり、いまだ県と市の協議は平行線をたどっている。煮え切らない北橋氏の態度が、4期目の市政運営に悪影響をおよぼすことはないだろうか。県知事選の行方が注目される。
【山下 康太】
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