2024年11月24日( 日 )

【日韓ビジネスコンサルタントの視点】米中貿易戦争長期化への懸念~戦々恐々の韓国経済(3)

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中国が取り得る3つの戦略

 それでは、今回の米中貿易戦争の真の狙いはどこにあるだろうか。中国はこのペースで行くと、2020年の中盤ごろアメリカを抜いて世界ナンバーワンの経済大国になると予想されている。先端技術においても、その追い上げぶりは尋常ではない。次は、産業のコメと言われている半導体分野でも、世界の覇権を握るための準備に拍車をかけている。「中国製造2025」というのは、中国は今のような労働集約分野ではなく、最先端製造分野で世界ナンバーワンになろうという計画である。

 そのような中国を、今のうちにけん制し、その計画を実現できないようにすることはアメリカの戦略になるわけである。トランプ大統領は、できるだけ多くの雇用を創出することと、アメリカの製造業の復活を望んでいるが、鉄鋼に高い関税をかけても、雇用の創出にはつながらないし、また製鉄業が復活するとは思えない。むしろ消費者物価の上昇につながって、経済的にはむしろマイナス効果しかないかもしれない。また一部では関税を課すことによって物価が上昇し、トランプ氏にはマイナスになりかねないという指摘もあるが、物価上昇は大型減税でカバーできるのでそれほど心配しなくてもよいという指摘もある。18年1月からスタートしたトランプ減税は30年ぶりの抜本的な税制改革で、金額ベースでは過去最大規模になっている。法人税率は31%から21%に下げられ、個人においては、減税額は10年間で1兆ドル以上となっている。

 まずは、本来の目的である3,752億ドルに膨らんだ対中貿易赤字の解消である。それと同時に、「中国製造2025」を阻止する。経済と政治と軍事は切り離して論じることができない。米中貿易戦争は、表向きは経済戦争のように見えて実は覇権争いのバトルだ。アメリカには、中国の金融市場を開放させる思惑もある。従って今回の貿易戦争は一過性のものではなく、長引くことになるだろう。

 こうしたアメリカに対し、中国はどのように対応していくのか。中国が取り得る戦略は3つ。1つ目は交渉による妥結である。アメリカの立場を理解したうえで、アメリカの主張を受け入れることだ。

 2つ目は、中国市場をもっと開放すること。合弁会社設立などの規制を撤廃し、中国市場に外国企業が入りやすいようにすべきである。最近、中国は、自動車、消費財、医薬品などの関税を大幅に引き下げている。それだけでなく、金融市場を開放するためのロードマップも明らかにしており、外国人投資の制限も縮小するという措置も断行している。 しかし、アメリカは、これに対してもっと日程を短縮することと、2020年7月までに中国の関税をアメリカと同じ水準にすることを求めている。

 3つ目は、アメリカの対応に真っ向から対立する方法である。実際に習近平は今まで強硬姿勢を堅持している。しかし、中国のこのようなスタンスがいつまで継続できるかはわからない。米中貿易戦争を懸念して株価は下がり続けているし、人民元の切り下げも続いている。人民元の価値が下がると、輸出には有利かもしれないが、物価が上がり、庶民経済に打撃を与える。

 しかし、一方では、中国のアメリカへの輸出は中国GDPの3.6%に過ぎず、中国経済にはそれほど大きな打撃にならないという分析もある。中国の輸出のなかでアメリカへの製品割合は5分の1くらいの割合。それほど深刻な影響はなく、輸出先を多角化するか、内需にシフトする方法もあるようだ。

(つづく)
【劉 明鎬】

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