2024年11月25日( 月 )

グローバル市場で成長を続ける 国際物流事業パイオニアの強みとは(3)

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西日本鉄道(株) 国際物流事業本部
 執行役員副本部長兼営業企画部長
 黒飛 茂樹 氏

サービスの品質向上がシェアの拡大につながる

 ―海外進出でシェアを拡大する際に、御社と海外企業の戦略の違いはありますか。
 黒飛 世界で物流のシェアを拡大する際には、欧米系の企業はまず利益を上げることよりシェアを拡大することを重視します。一方、弊社は適正利潤の確保など事業の確実性を重視するため、シェアの拡大には欧米系の企業と比較すると時間がかかります。

 しかし、お客さまのご要望がある時にはひざを詰めて話すことを大切にしており、誠実に時間をかけて対応します。そのため結果的には、貨物のダメージやオペレーションミスなどの品質の問題が減少し、サービスが向上します。そしてお客さまのかゆいところに手が届くサービスをご提供することにより、地道なシェアの拡大に繋げています。

 また、海外取引で既存の現地企業がビジネスを行っているなかで新規の商流を獲得する方法としては、お客さまが既存の海外取引先をお持ちの場合、1つのファクターのみでは取り込むことは難しいため、第2や第3のファクターをご提示して、弊社との取引にメリットを感じていただけるようにご提案しています。

 物流サービスの取引ファクターは多くの場合にはまず価格ですが、実際には物流サービスは価格以外のファクターもあるため、たとえば安定した運送力や物流データ連携による業務効率化のメリット、運送状況の可視化などの付加価値をご提案して差別化しています。

コンプライアンスを重視

 ―消費スタイルの変化にともなうネット通販の拡大により、ビジネスに影響はありますか。
 黒飛 ネット通販の国際取引の拡大により、とくに中国関連の国際輸送貨物の取扱量は年々増加しています。国際的な輸送では通関行為をともなうため、貨物が正確に判別できない場合に誤申告のリスクが発生します。また、貨物が危険物に該当する場合は運送可否の判断も含め規則に則った手続きが必要です。そのため、貨物を正確に判定し、手順に沿った慎重な取り扱いをするなど、AEO認定通関業者としてのセキュリティを守り、コンプライアンスを行うことが自社の強みと考えています。

誠実な対応とアットホームな社風で社員の定着率が高い

 ―人材難の時代でもやはり高いブランド力があると感じるのですが、どのような採用戦略を取っておられますか。
 黒飛 国際物流事業本部は部門としての独自採用を行っており、毎年約40名を定期的に新卒採用しています。近年の就職活動はインターネットが主流のため、国際物流事業本部のホームページから応募ができるように工夫しています。また、年に2回のインターンシップを行い、採用に積極的に活用しています。学生にとって貨物利用運送業はあまり馴染みがない業種のため、インターンシップの演習を通して業務内容を理解したうえで面接に進んでいただくようにしています。

 採用において弊社が学生から選んでいただいている理由としては、インターンシップの時の対応が誠実で配慮が感じられることと聞いています。やはり西鉄グループのアットホームで温かい社風を感じられるようですね。なお、西鉄の理念を継承しグループ内での意思疎通を行うために、年に3回の西鉄グループ全部門の部長職が会するグループ経営戦略会議や、年に2回の海外現地法人の23社との世界会議(ワールドワイドミーティング)を実施し、事業計画や方針を共有しています。

 また、社員の定着率が高い理由としては、周りと協調性を保ちながら自分の能力を発揮する社風に合う方が応募されることと、話し合いのなかでモチベーションを上げる方法で業務を進めていることが大きいと考えています。ただし物流業界でもお客さまのコスト削減の要求は強く競争も激しいため、業務を行うなかで能力が磨かれる印象は強いです。

(つづく)
【文・構成:石井 ゆかり】

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