九州台湾商会が台湾に連絡事務所設置 連携強化と交流促進を

(一社)九州台湾商会名誉会長
賴玉汝 氏

九州台湾商会

 台湾積体電路製造(TSMC)などの主要企業の九州進出を背景に、台湾のサプライチェーンおよびサービス産業も九州への展開を加速させている。そこで台湾華僑の企業家で構成される(一社)九州台湾商会(福岡市中央区)は17日、台湾中部・台中市に「台湾連絡事務所」を設立した。大倉仲洋同会長によると、台湾側から九州の視察や関係者の紹介などに関する依頼が大幅に増え、会の幹部らが個人で対応を続けるのは限界があり、事務所設置に至ったという。台湾では現在、一種の対日投資ブームが発生しているが、同事務所で台湾側の要望が集約・精査されることで、日本の企業などとのマッチングが進むことが期待される。以下に賴玉汝同名誉会長からの寄稿文を紹介する。

 本事務所について、商会による対台業務推進の前線拠点であると同時に、政策フィードバック、産業連携、現地展開、人材育成、越境協力など多機能を兼ね備えた制度的なハブとして位置付けており、日台双方の実質的かつ持続可能な協力体制の構築に寄与したいと願っています。

 九州台湾商会は長年にわたり日台間の産業・民間交流を促進してまいりました。九州・山口の8県をカバーし、中央政府と地方自治体をつなぐとともに、産・官・学・研・民の各界と連携する制度的プラットフォームとしての役割をはたしています。

 本事務所は次の3つの戦略的目標を担います。(1)政府・法人向け政策協力とプロジェクト推進支援:台湾の中央および地方自治体による対日交流、国際フォーラム、戦略研究、地域政策提言に対応する正式な協力窓口として機能します。(2)企業およびスタートアップの日本市場進出支援:商会の法人資格を生かし、商談仲介、現地進出支援、ビジネス法務、政策訪問、製品調査等の正当な行政・実務支援基盤を提供します。(3)「台湾-日本-第三国」連携による新興市場進出促進:不安定な国際貿易環境においても、東南アジア、欧州、中東などへの進出を支援し、台湾の国際的な産業競争力の強化を図ります。

 本事務所は次の3つの制度的強みを備えています。(1)法的地位の明確性:日本国内法に基づく法人として、政府計画の海外実施や委託事業に対応可能です。(2)ビジネス協力の正当性と実行力:在日活動における合法性・信頼性を担保します。(3)情報・政策フィードバックの即時性と接近性:現地の動向を迅速に捉え、実効的な支援を提供します。

 本事務所には、九州台湾商会の若手幹部である戴家銘氏、鐘元駿氏、賴建宏氏の3名が常駐し、公共部門・国際交流・産業連携・実務運営における豊富な経験を生かし、台湾の政府機関・企業・教育研究機関との信頼性の高いコミュニケーション拠点を構築していきます。

 今後、九州台湾商会は本事務所を通じて、日本の地方自治体や大学、業界団体、商工会議所などとの連携を一層強化し、日台双方によるフォーラム、産学座談会、技術移転、人材育成、地域間提携といったクロスボーダー施策の実施に取り組みます。本事務所が「地域に根差し、連携し、世界とつながる」持続可能な協力ビジョンの象徴となることを期待しています。

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