中国企業「友利家具」として挑む家具づくりとは?(中)
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日本人は「細かいことを大きな問題にする」
―最初から張英さんに会社を任せる考えだったのですか?
武野 もちろんそうです。彼女は、会社を任せるための奥さんです。目的ははっきりしていました。彼女にはまず、上海協栄家具有限公司の南翔工場に入ってもらって、みんなと一緒に仕事をしてもらいました。彼女は、ほかの社員を圧倒するほどの、びっくりするような働きっぷりでした。
―仕事を頑張る気持ちは強かったのですか?
張英 私は、「仕事が好き」で頑張ったわけではありません。日本人はほかの人のことを大事にしますが、中国人は自分のことを一番大事にします。以前に比べ、社員を大事にするという武野会長の気持ちは理解できるようになっていますが、やはり中国人と日本人とでは、根本的な考え方が違います。私は上海人なので、今でも「自分が一番大事」という考えのほうが強いです。
日本人は「細かいことを大きな問題にする」ところがあります。中国人は「大きな問題があっても大丈夫」と考えます。武野会長は「ゴミを拾いなさい」と何度も言いますが、普通の中国人には理解できません。「そんな細かいことで怒ってどうなるの?」と受け止めています。そういう違いを理解できないから、中国に進出した多くの日系企業は、あきらめて、中国から撤退しているのです。
私も、武野会長の奥さんでなければ、アダルを辞めていたことでしょう。武野会長が理想とするような会社づくりは、中国ではあり得ないからです。それは能力の問題ではなく、環境や習慣などのお国柄の違いです。
武野 合弁会社のころ、中国人のスタッフに「これはこうしなさい」と指導したのですが、後日見ると、元に戻っている。再度同じ指導をして、後日見ると、また元に戻っている。私が「なぜ私が言った通りしないのか」と尋ねると、中国人スタッフは「上司から自分のいう通りにすれば待遇を良くすると言われたから」と答えました。私の指導よりも、上司の意見を優先させたわけです。日本と中国の文化の違いというのは、たとえばそんな感じなんですよ。
―会社の商品などがなくなることもあるそうですが・・・。
武野 今でもその可能性はあります。これからもズーッと続くと思います。これも文化の違いですね。
張英氏がいたからこそ今のアダルがある
―張英さんは発想が日本人と違いますか?
武野 彼女は「仕事が好きではない」と口では言いますが、彼女ほど働く日本人はそうはいません。「仕事が好き」と言っている日本人よりも、よほど働いています。たとえば、工場の作業がどんなに遅くなっても、必ず彼女は最後までいます。彼女のお姉さんの張诘社長も同じです。こういうことは、仕事が好きでなければできないことです。
張英 「仕事をやるなら、完璧にやりたい」という気持ちがあります。ただ、能力が足りないので、うまくいかないことがあります。武野会長やお姉ちゃんと意見が対立することも少なくありません。お姉ちゃんも気が強いので、揉めることもあります。仕事がうまくいかないと、家族関係にも影響が出る。誰も満足していない。それは非常に悔しいことです。友利家具を設立してから、悔しい思いをすることが多くなっています。
「なぜこんなに苦労しなければならないのか」と思うこともあります。ただ、納期があるから、やるしかない。今の私の人生には幸せはありません。
ただ、私は奥さんの仕事は好きです。武野会長のためにご飯をつくったり、いろいろと世話をするのは苦になりません。納期やトラブルなどのプレッシャーがないので、楽だからです。
私が会社に最後まで残っているのは、80歳の武野会長が働いているのに、私だけ帰るわけにはいかないからです。確かに、仕事は嫌いではありませんが、もっと休みが欲しい。武野会長から連絡があったら、すべて対応しないといけない。武野会長以外の人からも、朝晩関係なく、24時間電話やメールなどが入る。これも全部対応しないといけない。私の理想は、土日が休みで、平日は午後5時に帰ることですが、これはもうあり得ないことです。社員が工場で働いているのに、私だけ帰るのは悪いことだと感じる。何が起きるかわからないので、心配でしようがない。とくに仕事のトラブルの連絡が入ったときのショックは、言い表すことができません。
(つづく)
【大石 恭正】
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