落ち目の文在寅政権 植民地時代の実相を知るべきだ(前)
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2月28日に合意のないまま終了した米朝首脳会談後、韓国大統領と与党の支持率が下落した。このような背景もあってか3月1日に行われた文在寅大統領による独立運動記念日の演説には反日的な内容はなかった。このような情勢にあって、日本統治下時代の朝鮮半島の実像を再確認する意義は大きい。
文在寅大統領、就任以来最低の支持率韓国・文在寅大統領の支持率(リアルメーター調べ)が14日、45.0%までに下落した。不支持率が50.1%である。2017年1月に大統領に就任以来、最低の支持率である。不支持が50%を越えたのも初めてだ。先月28日の米朝首脳会談が大失敗に終わったことで、同大統領がもろに打撃を受けたかたちだ。バランスを欠いた対北偏重路線が招いた自業自得であるというしかない。
一本足のカカシ政権状態だった同政権は、今後、徴用工(正確には戦時労働者)裁判への韓国政府の対応に業を煮やした安倍政権から対抗措置を受ける可能性が高い。韓国国民や文大統領には冷静になって、ぜひ、日本植民地時代の実相を知っていただきたいものだ。
低落した与党支持率も注目される。与党「ともに民主党」の支持率は37.2%であり、野党の「自由韓国党」が32.3%と差を詰めてきた。政権発足当時は、その差が40ポイント以上もあった。今後、文政権の失政が続くと、与野党の支持率が逆転する可能性すらある。
「大韓民国大統領が金正恩の首席スポークスマン、という顔が赤くなるような話を聞かないようにしてください」。韓国国会では、野党の院内代表(女性議員)が、こう発言して物議を醸した。しかし、これは昨年9月、米ブルームバーグ通信が書いた記事がネタ元だ。半年も経って、韓国国会でも取り上げられる政治環境になったというわけだ。
最近の韓国国民はどう考えているのか。
韓国ギャラップの世論調査によると、北朝鮮は「絶対に核兵器を放棄しない」との回答が64%を数えているという。米朝首脳会談で冷水をあびせられ、韓国民も目を覚ましたということか。いや、そうでもない。北の核を保持したまま南北統一というシナリオが、韓国内にはある。そうなれば、日本にとっては最悪のケースだ。
崔相龍氏(元高麗大学校教授)のような良識派が韓国にいないわけではない。彼は金大中政権時代に駐日大使を務めた。しかし、彼らは少数派であり、韓国内では影響力に欠ける。崔氏は最近、ある討論会で次のように述べた。
「外交ではジェスチャーがもつ重要な含意がある」。これは昨年10月、日韓共同宣言20周年の記念式典に安倍首相が出席した事実を指摘したものである。崔氏はこの点を喚起しながら、その際の「安倍首相の真意を問うことは意味がない」と喝破した。
ここがポイントである。外交とはそういうものなのだ。日本側は何回も首相談話で謝罪や遺憾の意を表明してきた。国家間外交ではそれで十分だということなのだ。これは日米関係、日ソ関係、日中関係の前例を見ても明らかである。こういう初歩的なことがわからないのが、暴言を繰り返した韓国の国会議長なのである。崔氏の発言が国会議員会館で行われたのは、その鈍感さに対する痛烈な皮肉だ。
(つづく)
<プロフィール>
下川 正晴(しもかわ・まさはる)
1949年鹿児島県生まれ。毎日新聞ソウル、バンコク支局長、論説委員、韓国外国語大学客員教授、大分県立芸術文化短大教授(マスメディア、現代韓国論)を歴任。現在、著述業(コリア、台湾、近現代日本史、映画など)。最新作は「忘却の引揚げ史〜泉靖一と二日市保養所」(弦書房、2017)。関連キーワード
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