爆発的に拡大する再生可能エネルギー、日本は世界から取り残される!(前)
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日本は「不思議な国だ!」と世界から見られている。世界で唯一の「原爆被爆国」であり、チェリノブイリ原子力発電所事故と並ぶ、未曽有の「福島第一原子力発電所事故」を起こしたにも拘わらず、いまだに原発を世界で最も熱心に進める。再生可能な自然エネルギーが世界のエネルギー政策の本流であるにも拘わらず、その流れに背を向ける。
2018年の時点で、あらゆる電源のなかで、一番安いのは「太陽光(発電)」で、二番目に安いのは「風力(発電)」であることが世界の常識となった。日本でいわれる「石炭が一番安く、次が原子力、自然エネルギーは高い」は風聞の域を超え陰謀の類とさえいえる。
8年目の3.11を迎え、自然エネルギー政策で国内外の第一人者、飯田哲也環境エネルギー政策研究所(ISEP)所長に聞いた。飯田氏は直前、日比谷公園「ソーラーシェアリング・ドーム」で行われた「Peace On Earth」のトークショーにゲスト出演している。環境エネルギー政策研究所 所長 飯田 哲也 氏
世界に背を向けたまま、エネルギー転換に失敗
――3.11の各種イベントが重なりお忙しい中、お時間を賜りありがとうございます。先ずは、日本のエネルギー事情を俯瞰していただけますか。
飯田哲也氏(以下、飯田) 一言で言いますと、7年前(2012年)の7月1日に当時の民主党政権で導入・運用を開始したFIT(固定価格買取制度)は、色々と問題はありましたが、日本のエネルギー政策にとって、とても大きな一歩でした。その後、安倍政権になって、太陽光が成功していたにも拘わらず、それを生かそうとせず、明らかに行き詰っている原発や本来やるべきでない石炭火力を国際公約に反して強引に進めようとしています。G7などの先進国はもちろん、中国やインドも日本のような旧いエネルギーから離れつつあります。世界の現状と日本の政策には大きな乖離があり、そのことが日本のエネルギー未来をより不透明なものにしています。このままでは、日本は1人、世界中で進展しているエネルギー転換から取り残されるでしょう。
「大艦巨砲主義」に固執した旧日本海軍に相似
一番わかりやすいのは原発の輸出です。日立製作所が英国で進めてきた原発建設計画を凍結、三菱重工業もトルコでの計画から撤退、それ以前に東芝は原発輸出による巨額の損失で倒産間際に追い込まれ、会社が解体されてしまいました。これで日本の原子炉メーカーが関わる案件はすべて頓挫しました。安倍政権が企業と二人三脚で取り組んだ「原発輸出」は総崩れしました。この問題は、安倍政権が自らの失敗を省みていないか、いかに世界の変革が見えていないか、その愚かさの象徴です。もともと、日本の原子力企業は、設計パッケージという技術の体系を50年経ってもつくることができませんでした。結果として、日本の原発は、どれもGEかウェスティングハウスの設計パッケージなのです。原子力輸出と意気込んでも、日本は下請として参加できるに過ぎないというのが現実です。
世界のエネルギーは急速かつ加速度的に、「太陽光」「風力」「蓄電池」の3本柱に移行しつつあります。これから10年で、エネルギー源のシフトはもちろん、産業構造そのものを大きく変えようとしています。今は、想像力を働かせて、それに備える時です。しかし、安倍政権では過去のエネルギー、過去の産業構造にしがみついています。
まるで、かつての太平洋戦争で時代の変化を見ようとせず、「大艦巨砲主義」に固執した旧日本海軍と同じ過ちを繰り返えそうとしているように思えます。
世界のエネルギー転換を遅らせてきたIEAでさえ変わった
――現在の世界のエネルギー事情はどうなっているのでしょうか。
飯田 世界のエネルギー政策とエネルギー産業界の中心にいる人たちの見方がこの5年で根底から変わりました。
その筆頭は、かつては石油・原子力倶楽部と揶揄されてきた国際エネルギー機関(IEA)です。IEAは『World Energy Outlook』(中・長期にわたるエネルギー市場の予測)を毎年出しています。IEAは、これまで太陽光と風力に関しては、意図的に極端に低い将来予測をしてきました。更新するたびに、上方修正をするのですが、現実が毎年それを上回った伸びをしています。グリーンピースインターナショナルなど国際NGOの多くは、世界のエネルギー転換を遅らせてきたのはIEAだと厳しく批判してきましたが、実態は、世界の自然エネルギー事情を理解できていなかったのでしょう。
さらに2009年に国際再生可能エネルギー機関(IRENA)ができた時、IEAは競合を嫌って大反対し、一部の加盟国も同調しました(日本はその筆頭)。しかし、そのIEAも約3年前から、自然エネルギー重視に見方を変えました。「自然エネルギーを軽視すると現実を見失う」ということに気づき、2015年の「パリ協定」(気候変動抑制に関する多国間の国際的な協定)のころからガラリと変わりました。
再生可能エネルギーの主力電源化という文言が入った
昨年は日本でも変化がありました。7月に閣議決定された「第5次エネルギー基本計画書」に「再生可能エネルギーの主力電源化」という文言(見出し)が入ったのです。実際の中味を見ると、必ずしもその見出しを反映していませんし、むしろ真逆なことが書かれています。しかし、今まで「研究開発の対象」の域を出なかった自然エネルギーの「主力電源化」が国策のキーワードに入ったことは戦後のエネルギー政策の歴史のなかで初めてのことです。内容的には何も見るべきもののない基本計画ですが、将来的に振り返った時に、間違いなく「歴史文書」として注目されるでしょう。
(つづく)
【金木 亮憲】<プロフィール>
飯田哲也(いいだ・てつなり)
1959年山口県生まれ。京都大学工学部原子核工学科、東京大学大学院先端科学技術研究センター博士課程単位取得満期退学。認定NPO法人環境エネルギー政策研究所所長。日本のFITの起草者で、自然エネルギー政策では、国内外の第一人者かつ日本を代表する社会イノベータ。国内外に豊富なネットワークをもち、REN21運営委員、自然エネルギー100%プラットフォーム理事などを務め、2016年には世界風力エネルギー名誉賞を受賞。日本でも国・自治体の委員を歴任。関連記事
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