中国化粧品市場の競争が激化、外資ブランドが相次いで撤退

化粧品 イメージ    7月15日に中国国家統計局が発表した上半期の小売統計によると、1~6月の社会消費財小売総額は24兆5,500億元(約509兆円)で、前年同期比5.0%の増加を記録した。そのなかで、化粧品類の小売額は2,291億元 (約4.7兆円)と、前年比2.9%の伸びとなっている。

 しかし、数値上の成長とは裏腹に、市場の実態は「二極化」が進んでいる。資金力・資源力のある大手ブランドが成長を続ける一方、中小企業やニッチブランドは市場からの撤退を与儀なくされている。その象徴的な出来事の1つが、香港の化粧品チェーン「SaSa」による中国本土撤退だ。2024年末時点で残っていた18の店舗は、今年6月30日までにすべて閉店された。同社は20年前に戦略の重心を中国本土へ移し、勢力拡大を目指してきたが、ここにきて中国市場からの完全撤退を選んだ。

 このような撤退は莎莎だけにとどまらない。2025年上半期だけでも、少なくとも十数ブランドが中国市場から姿を消している。なかには韓国や欧米の大手化粧品企業傘下のブランドも含まれ、「外資だから売れる」という神話が通用しない時代が到来していることを象徴している。

 たとえば、韓国・Amorepacificの高級スキンケアブランド「SIENU」は2022年に京東(JD)に進出したが、2025年には天猫(Tmall)海外旗艦店を閉店した。また、同社の人気ブランド「Innisfree」も7月に天猫の店舗を閉鎖。全盛期には800店舗以上を展開していたが、韓流ブームの衰退とともにブランドの勢いも失速している。

 さらに、オランダのユニリーバ傘下の高級スキンケアブランド「TATCHA」も、4月に天猫の海外旗艦店を閉鎖し、TikTokなどのSNS公式アカウントも更新を停止。ユニリーバは2019年にTATCHAを5億ドル(約36億元)で買収し、高級化粧品市場への本格参入を図ったが、中国市場では思うような成果を上げられなかったようだ。

 このように外資系ブランドが苦戦する背景には、中国市場での運営コストの上昇と、 「流量経済」と呼ばれる広告・プロモーション費用の高騰がある。とりわけ、資生堂などの日系ブランドも例外ではなく、競争環境は年々厳しさを増している。

 一方で、こうした外資系ブランドの撤退を受けて、中国ローカルブランドの存在感が高まっている。2025年上半期には、すでに5社の中国化粧品企業が香港や米国の資本市場への上場を目指して動き出している。これらの企業は、抖音や小紅書といった中国独自のSNSマーケティングに長けており、ローカル市場への対応力や価格競争力を武器に急成長している。

 今後の中国化粧品市場は、「品質×価格×中国消費者理解」という3つの要素が成功のカギとなる。海外ブランドが撤退を余儀なくされる一方で、ローカルブランドが新たな成長の主役となる構図は、今後も続く可能性が高い。


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