2024年11月23日( 土 )

『脊振の自然に魅せられて』キバナノアマナ(黄花の甘菜・ユリ科)

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 3月中ごろに咲き始め、春の花として細々と生き延びているユリ科の花があります。

 名前は「キバナノアマナ」で渓谷沿いの湿気を好むようです。植物のなかでも特異なかたちをしています。花瓶に飾るフィリージアを細く小さくしたイメージを想像してみると良いでしょう。細く伸びた茎は柔らかく、空に向かって伸びておらず、ゆるく地面に伏せって、花が咲くころはいつも地面にお辞儀をしています。茎が柔らかすぎて立てないのです。

 その先に黄色い小さなユリ科とわかる花を咲かせています。

 この花の存在を知ったのは10年ほど前ですが、以前この周辺に多く自生していたそうです。私が会いに行った時は細々と生き延びている状態でした。
私を含めた花を愛する愛好家は、何とか足で踏まれないよう、この花を見つけると石で囲って来ました。

 この場所からさらに上部に1坪ほどの広さに自生しているのに遭遇し、石囲いをして私の花壇をつくりました。花の数は毎年、多かったり、少なかったりです。それでも「元気にしていますか」と声をかけに行きました。

 こうした努力が報いられたのか、今年訪れてみると家族が増えて賑やかになっていました。山仲間は「花壇のようですね」と言いながら腰を屈めて撮影していました。「もっと大きな石で囲えばいいのに」との声もありました。

 しかし、大きな石で囲うと風の流れに微妙に左右されると思っています。そっと囲うのが私流なのです。自然のままに生かしてあげたいのです。

 「ほかにないかな」と、目を皿のようにして周囲を歩いていると、なんと種が飛んだのか、あまり人が来ないマイナーコースの登山道の左右にも若い茎が見つかりました。ここまで来れば絶滅することはないと安心しました。

 メインの登山道にもキバナノアマナが一輪だけ咲いていました。ここまで種が飛んできたのでしょうか。そこに2、3個ほど石が置いてあり、「この花を踏まないでね」と登山者が花に愛情を注いでいました。

 最近、SNSによる拡散の影響などで、この花の存在も知られるようになり、鑑賞に来る人が増えました。しかし荒らされてはいません、マナーが良くなってきたように感じます。
 山野草のどの花も、そっと暖かく見守ってほしいものです。

 

「行く春に  見初めし君は  露おびて  心和ます  黄花の甘菜」 

 

「キバナノアマナ」(2015年3月29日撮影)

2019年3月25日
脊振の自然を愛する会
代表 池田 友行

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